浪江町民等の集団申立案件にかかる原子力損害賠償紛争解決センターの和解案提示理由補充書に関する会長声明
浪江町民15000人以上による集団申立案件について、同案件を担当する原子力損害賠償紛争解決センター(以下「センター」という。)の担当パネルは、本年8月25日付けで、和解案提示理由補充書(以下「補充書」という。)を提示した。
補充書は、東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)が、本年3月20日に提示されていた和解案の重要な部分について、事実上拒否する回答を行っていたことに対し、和解案が浪江町民であることのみをもって一律に精神的損害を増額したものではなく、申立人らそれぞれの置かれた状況の下で、今後の生活再建や人生設計の見通しを立てることが困難であって、将来への不安が増幅している共通して認定された個別事情を考慮したものであり、中間指針等と矛盾したものではないこと、75歳以上の高齢者についても避難生活への適応が困難な事情があって総括基準に反するものではないことを具体的事実を示して説諭したものである。
このように、補充書は、東京電力に本和解案の趣旨を補足して再度説明を行い、その正確な理解を求め、東京電力が、自らセンターの和解案を尊重する旨を誓約していることを改めて認識の上、和解案の真意を理解し、これを受け入れ、早期に和解が成立することを望むとするものであり、和解成立に向けた真摯な努力に敬意を表するものである。
当連合会は、東京電力に対して、再三にわたり、自ら策定した新・総合特別事業計画等において掲げた「和解仲介案の尊重」を遵守し、被害者に対して迅速な賠償を行うよう求め、また、政府に対しても、東京電力に対し強く指導を行うよう、要望してきた(本年6月27日「浪江町民等の集団申立てにかかる東京電力による原子力損害賠償紛争解決センターの和解案拒否に関する会長声明」、同年8月20日「『東京電力の和解案への対応に対する総括委員会所見』に関する会長声明」等)。
当連合会は、今般補充書が提示されたことを受け、改めて、東京電力に対し、補充書の趣旨を真摯に受け止め、和解案を尊重し、各和解案に同意することを強く求めるとともに、政府に対しても、東京電力に対し、その旨、強く指導することを求める。
日本弁護士連合会
会長 村 越 進