改正貸金業法の完全施行後4年を迎えての会長声明
貸金業法等の改正による出資法の上限金利の引下げ及び収入の3分の1以上の貸付の禁止(総量規制)等の完全施行がなされてから、本日で4年が経過した。
法改正時からこれまでの間に、5社以上の借入れを有する多重債務者が約230万人から約18万人に、自己破産者(自然人)は約17万人から約8万人に、いずれも激減している。懸念する声があったヤミ金の被害に関しても、各地の警察署、消費生活センター等への被害届、相談件数等は減少傾向を示している。また、偽装質屋の摘発による出資法違反事案は増加しているものの、警察の取締りによってその被害も抑制されている。
加えて、多重債務による自殺者は法改正時の1973人から688人に大幅に減少した。全体の自殺者は、2012年には15年ぶりに3万人を割り、2013年も27,283人となっており、多重債務対策は自殺対策としても機能していると評価されている。
このように、統計上、改正貸金業法の完全施行によって、多重債務問題は大きく改善していることは明らかである。しかるに、近時、一部の優良貸金業者については、総量規制の適用を受けないこととし、さらに、金利規制を緩和しようとする動きがある。「改正貸金業法の完全施行により借りられなくて困っている人が増えた」、「ヤミ金が増えた」等を理由とするものであるが、その主張を裏付ける事実は確認されていない。
さらに、特定複合施設区域の推進に関する法律案(いわゆる「カジノ解禁推進法案」)が国会に提出され、本日、審議入りした。同法案は、一定の条件の下にカジノという民間賭博場の設置を認めるとするものであるが、多重債務問題の再燃が懸念されることから、廃案を求めたところである。
このようなカジノ解禁推進法案の審議入り及び総量規制の撤廃等の貸金業法の改正の動きは、多重債務問題が解消に向けて大きく前進していることに逆行するものである。
今後も当連合会は、総量規制の撤廃や金利規制の緩和に反対するとともに、カジノ解禁推進法案の廃案を重ねて求め、多重債務者の救済に積極的に取り組んでいくことを、ここに決意する。
日本弁護士連合会
会長 村 越 進