原発事故避難者の住宅の供与期間の延長等を求める会長声明
福島第一原子力発電所事故(以下「本件事故」という。)による避難者は、福島県が把握しているだけで県内に約8万5000人、県外に約4万7000人の多数に上る。
福島県が本年4月28日に公表した避難区域内・外の双方の避難者に対する意向調査の結果では、「現在の生活で不安なこと・困っていること」は「住まい」であるとの回答が最も高く(63.4%)、「応急仮設住宅の入居期間の延長」を求める声が40.4%に上った。住まいに関する声としては、昨年10月に公表された子ども・被災者支援法の基本的施策に関するパブリックコメントでも、応急仮設住宅の供与期間の延長を求める意見や、仮設住宅間の転居の弾力的対応を求める意見が多数寄せられていたところである。また、県外避難世帯の36%が、今後の生活予定について「現時点で決まっていない」と回答し、来年の住居さえわからない状態に置かれ続けているが、このような不安定な生活基盤の下では、就労や就学の見通しも立てられず、生活再建などあり得ない。このように、多くの避難者が住まいについて不安を訴えていることについて、国及び自治体は重く受け止め、深刻な訴えに真摯に耳を傾ける必要がある。
さらに、本件事故はいまだに収束のめどが立っておらず放射能汚染も続いている。上記の福島県意向調査では、帰還希望者が挙げた条件の中で「放射線の影響や不安が少なくなる」(40.9%)が最多であった。原発事故は一般の自然災害と本質的に異なり、年月の経過により自ずと解決に向かうような問題でもないから、従来の自然災害と同じ枠組みでの対応は明らかに不合理である。
本件事故による避難者の多くは、災害救助法に基づく仮設住宅や、民間賃貸住宅の借り上げ住宅(いわゆるみなし仮設)等に入居している。同法に基づくこれら仮設住宅等の供与期限は、現在のところ2015年3月末までとされており、その後の延長については、政府は福島県と協議中であるとしている。万一、災害救助法に基づく住宅支援が打ち切られれば、多くの避難者が元の居住地への帰還を強いられる結果となり、被ばくを避ける権利が失われることにもなりかねない。
災害救助法に基づく現在の住宅支援方法は、避難者が安定した生活基盤を確保した上で生活再建を図るという観点から多くの問題がある。たとえば、供与期限の延長が1年単位であること、供与期限が各地でまちまちであること、避難者の新規受入れが打ち切られていることなどの問題点があり、その運用は抜本的に改める必要がある。また、公営住宅への有償入居のあっせんが積極的に推進されつつあるが、方向性の見直しが必要である。当連合会としては、これら問題点についてなお検討を深め、改めて意見を述べることとする。
まず、喫緊の課題として、当連合会は、内閣府、復興庁、福島県及び周辺各県に対し、災害救助法に基づく仮設住宅の供与期限を当面の間延長するとともに、仮設住宅間の転居について弾力的な対応を行う旨を速やかに決定し関係自治体に周知することを求める。
日本弁護士連合会
会長 村 越 進