人種的憎悪を煽り立てる言動に反対する会長声明

近時、東京・新大久保及び大阪・鶴橋などにおいて、排外主義的主張を標榜する団体による、在日外国人の排斥等を主張するデモ活動が活発化している。



当該デモにおいては、「殺せ、殺せ朝鮮人」、「良い韓国人も悪い韓国人もみんな殺せ」、「ガス室に朝鮮人、韓国人を叩き込め」、「鶴橋大虐殺を実行しますよ」など、人の生命・身体に対する直接の加害行為を扇動したり、特定の民族的集団に対する憎悪を煽り立てたりする言動が繰り返されている。


上記デモへの参加者による、人の生命・身体に対する直接の加害行為を扇動する言動は、朝鮮半島にルーツを持つ在日コリアンの人々を畏怖させ、憲法13条が保障する個人の尊厳や人格権を根本から傷つけるものである。



また、人種的憎悪や民族差別を煽り立てる言動については、日本が批准する国際人権(自由権)規約の20条2項が差別、敵意又は暴力の扇動となる国民的、人種的又は宗教的憎悪の唱道を法律で禁止することを締約国に求めており、また、日本が加入した人種差別撤廃条約の2条1項(d)は、立法を含む全ての適当な方法により、いかなる個人、集団又は組織による人種差別についても禁止し、終了させることを、締約国の義務としている。このことからみても、人種的憎悪や民族差別を煽り立てる言動をなくすことに、今、日本社会は真剣に取り組むべきである。



以上により、当連合会は、人種的憎悪や民族差別を煽り立てる言動に反対する立場を表明するとともに、人の生命・身体に対する直接の加害行為を扇動するこれらの言動を直ちに中止することを求める。



当連合会は、2004年に開催された第47回人権擁護大会において、外国人・民族的少数者の権利を保障し、多民族・多文化の共生する社会の構築を目指す宣言が採択されたところであり、お互いの違いを認め合う、多民族・多文化の共生する社会を築き上げるべく引き続き全力を尽くす決意を表明するものである。

 

 

 

2013年(平成25年)5月24日

日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司