法曹養成制度検討会議・中間的取りまとめに関する会長声明

政府の法曹養成制度検討会議が「中間的取りまとめ」を公表した。今後、パブリックコメントに付された後に最終的な取りまとめが行われ、これを踏まえて法曹養成制度関係閣僚会議が政府としての措置を決定するものとされている。昨年8月の設置以来、12回の会議を通じて真摯な検討を重ねて来られた委員並びに関係機関等の尽力に心から敬意を表する。


中間的取りまとめは、法曹有資格者の活動領域、今後の法曹人口、法曹養成制度の在り方という、法曹養成制度及びこれに関連する法曹の在り方に関わる重要事項についての検討結果を取りまとめたものであるが、法曹志願者の減少をはじめとする様々な問題に対する処方箋としては、なお検討が必要な点も少なくない。


第1に、今後の法曹人口の在り方については、司法試験の年間合格者数3000人という数値目標は現実性を欠くとして事実上撤回したことは評価できる。中間的取りまとめも指摘するように、この間、法曹人口の大幅な増加にもかかわらず、訴訟事件や法律相談件数は増えておらず、法曹の法廷以外の分野への進出も限定的であり、更に司法修習終了者の就職難が深刻化し、実務経験による技能習得の機会が十分得られない新人弁護士が増えている。このような現状を踏まえるならば、何よりも司法機能の充実と法曹の役割拡大に向けた真摯な取組こそが求められる。しかし、これらの具体化にはなお相当の期間を要するため、当面の合格者数については減少させ、急増から漸増へ転換する方向性をより明確にすることが必要である。


第2に、司法修習生に対する経済的支援の在り方については、「より良い法曹養成という観点から、経済的な事情によって法曹への道を断念する事態を招くことがないよう」という目的が掲げられてはいるが、給費制復活に向けた道筋が示されず、あくまで貸与制が前提とされており、上記目的の実現が現時点では極めて不透明といわざるを得ない。引き続き、同目的実現のための具体的措置に向けた検討が必要である。


第3に、法科大学院制度の改革については、現在実施されている法科大学院への公的支援の見直し方策を強化するという内容等にとどまっており、定員削減と統廃合に向けたより抜本的な施策として新たに法的措置を設けることについては先送りされかねない記載となっている。また、大規模校、中規模校を含んだ全体としての定員削減が必要という点も必ずしも明確にされていない。更に、法曹の多様性確保・地域司法の充実等の観点から法科大学院の地域適正配置、夜間法科大学院の存在意義をより明確にすることが必要であるが、それも極めて不十分である。総じて、危機的な状況にある法科大学院制度を理念に沿って抜本的に改革する必要があるという切迫感に乏しい内容と評価せざるを得ない。


その他、中間的取りまとめについては、法曹の活動領域拡大に向けた国の積極的な取組、司法試験受験回数制限の緩和、制度趣旨を踏まえた予備試験の在り方に関する検討、司法修習の充実に向けた検討など、最終取りまとめに向けて検討を深め、その内容を具体化すべき課題がなお少なくない。


当連合会は、法曹養成制度検討会議が、これらの諸課題について、司法機能の充実と法曹の役割拡大を図る司法制度改革の理念に基づき、また、今後パブリックコメント等を通じて寄せられる国民各層からの意見を十分に受け止めて更に検討を深め、最終取りまとめにおいては、現在の法曹養成制度等の問題の解決に向けた具体的な施策を提言されるよう強く期待する。


当連合会においても、法曹養成制度等の歪みの解消に向けて、引き続き全力を尽くす所存である。

 

 

 

2013年(平成25年)4月12日

日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司