成年被後見人の選挙権を剥奪する公職選挙法11条1項1号を違憲無効とした東京地裁判決に関する会長談話

本日、東京地方裁判所は、成年被後見人の選挙権を剥奪する公職選挙法11条1項1号を違憲無効とし、成年被後見人の選挙権を認める判決を言い渡した。



本日の判決は、選挙権について、憲法15条1項及び3項、43条1項並びに44条ただし書で保障されるとした上、国民から選挙権を奪うのは、それをすることなしには選挙の公正を確保しつつ選挙を行うことが事実上不能ないし著しく困難であると認められる「やむを得ない事由」があるという極めて例外的な場合に限られると判断した。その上で、成年被後見人とされた者が総じて選挙権を行使するに足る能力を欠くわけではないことは明らかであることから、成年被後見人から一律に選挙権を奪うことは「やむを得ない」制限であるということはできず、憲法15条1項等に違反するものであり、無効であると判断したのである。



当連合会は、2005年5月6日付け「成年後見制度に関する改善提言」において、選挙権が民主主義社会において最も基本的かつ重要な権利(憲法15条1項等)の一つであることから、成年被後見人の選挙権を制限する規定は早期に見直されるべきであるとの意見を表明し、昨年12月25日にも、国に対して、速やかに公職選挙法11条1項1号を削除する法改正を行うことを勧告してきたものである。



本日の判決は、当連合会の勧告の趣旨にも合致しており、選挙権の重要性や成年後見制度の趣旨を正確に踏まえた妥当な判断であり、積極的に評価することができる。



本日の判決においても、成年被後見人の選挙権を一律かつ全面的に制限することの違憲性が明らかとなったのであるから、国は、本件判決に対して控訴することなく、一日も早く成年被後見人の選挙権を回復するためにも、速やかに法改正に向けた取組を行うべきである。



当連合会は、今後も成年被後見人の選挙権を剥奪する公職選挙法11条1項1号の速やかな改正に向けて全力を尽くす所存である。



2013年(平成25年)3月14日

日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司

 

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