給費制復活を含む司法修習生への経済的支援を求める会長声明
本日、第66期の司法修習が開始され、約2、000名の司法修習生が全国各地の地方裁判所所在地に配属された。
司法修習生は、司法を担う法曹としての高い専門性を修得するため1年間司法修習に専念する義務を負い(裁判所法第67条第2項)、兼業・兼職が禁止され、収入を得る道はない。また、司法修習生は、全国各地に配属され司法修習を行うため、現在の居住地とは異なる場所に配属され、引越費用や住居費などの出費を余儀なくされることもある。
このような司法修習生の実態を踏まえ、新第64期及び現行第65期までの司法修習生に対しては、司法修習中の生活費等の必要な費用が国費から支給されていた(以下「給費制」という。)。しかし、昨年11月から司法修習を開始した新第65期の司法修習生から、給費制は廃止され、司法修習費用を貸与する制度に移行した(以下「貸与制」という。)。
当連合会は、本年6月、新第65期司法修習生に対し、司法修習中の生活実態を明らかにすることを目的としてアンケートを実施した。
このアンケートの集計結果によれば、28.2%の司法修習生が司法修習を辞退することを考えたことがあると回答し、その理由として、86.1%が貸与制、74.8%が弁護士の「就職難」・経済的困窮を挙げた。すなわち、司法試験に合格していながら、経済的理由から法曹への道をあきらめることを検討した者が3割近くもいる実態が明らかになった。
さらに、司法修習生の月平均の支出額は、住居費の負担がない場合が13万8、000円であるのに対し、住居費の負担がある場合は21万5、800円であった。司法修習の開始に伴い修習配属地への引越が必要だった司法修習生は、約6割を占め、この場合には、引越費用等で平均25万7、500円が別途必要になる。
以上のとおり、新第65期司法修習生に対する生活実態アンケートにより、貸与制の不平等さや不合理さが改めて明確になった。司法修習生の多くは大学及び法科大学院の奨学金等の返済義務を負担しており、更に貸与制による借金が加算されることになる。こうした経済的負担の重さや昨今のいわゆる「就職難」が法曹志願者を減少させ、有為で多様な人材が法曹の道を断念する一因となっている。
本年7月27日に成立した裁判所法の一部を改正する法律によれば、「司法修習生に対する適切な経済的支援を行う観点から、法曹の養成における司法修習生の修習の位置付けを踏まえつつ、検討が行われるべき」ことが確認された。これを受けて、同年8月21日の閣議決定により法曹養成制度検討会議が設置され、現在検討が進められている。
当連合会は、上記アンケートの実態を踏まえ、有為で多様な人材が経済的事情から法曹の道を断念することがないよう、早急に給費制復活を含む司法修習生に対する適切な経済的支援を求めるとともに、新第65期及び第66期の司法修習生に対しても遡及的に適切な措置が採られることを求めるものである。
日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司