「障害者総合支援法」成立に際して、改めて障がいのある当事者の権利を保障する総合的な福祉法の実現を求める会長声明

本日、国会で、「地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律」(以下「本法律」という。)が成立した。



本法律は、障害者自立支援法の名称を「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)」(以下「総合支援法」という。)と改めるなど、同法を一部改正するものである。



国は、2010年1月7日、障害者自立支援法違憲訴訟原告団・弁護団と基本合意文書を締結し、障害者の権利に関する条約の批准も視野に入れ、「障害者自立支援法を2013年8月までに廃止し、新たな総合的な福祉法制を実施する」と確約した。



これを踏まえ、当連合会は2011年10月7日、第54回人権擁護大会において「障害者自立支援法を確実に廃止し、障がいのある当事者の意思を最大限尊重し、その権利を保障する総合的な福祉法の制定を求める決議」を採択し、さらに2012年2月15日には「障害者自立支援法の確実な廃止を求める会長声明」を公表した。



しかし、総合支援法の内容は、障害者自立支援法の一部改正に留まり、障がいのある人の基本的人権を具体的に保障する規定が設けられていない。障がいの範囲についても、障害者の権利に関する条約が求めている「障がいが個人の属性のみではなく社会的障壁によって生じる」とする社会モデルの考え方が採用されず、そのために新たな制度の谷間を生む内容となっている。また、自己決定権に基づき個々のニーズに即して福祉サービスを利用できる制度にもなっていない。かかる総合支援法は、当連合会が従来提言してきた内容とは相容れないものである。



また、本法律は、附則に、施行後3年を目途として、常時介護を要する者に対する支援等の障害福祉サービスの在り方や支給決定の在り方等について検討を加え、所要の措置を講ずる旨の見直し規定を設けているが、本見直しに際しては、当事者参画のもとで、附則に例示された項目に限定されることなく、障がい者制度改革推進会議が取りまとめた骨格提言の内容が実現されるべきであり、障がいのある人の基本的人権を真に保障する福祉法制の実現に向けた検討が行なわれるべきである。



当連合会は、3年後見直しの際には、人権擁護大会決議に基づく内容が実現され、何人も障がいの有無により分け隔てられることなく地域で暮らせる権利が保障される福祉法制が実現されることを強く求める。

 

2012年(平成24年)6月20日

日本弁護士連合会
会長  山岸 憲司

 

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