南相馬市住民集団申立てに関する東京電力株式会社による和解案受諾についての会長談話

本年6月1日、東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)は、昨年12月28日に南相馬市住民34世帯130人が行った集団申立てについて、原子力損害賠償紛争解決センター(以下「センター」という。)が本年4月16日に提示していた和解案について、これを受諾する旨の回答を行った。



本件申立人らは、本件事故後、政府により屋内待避区域に指定され、昨年4月22日にその解除と同時に緊急時避難準備区域(同年9月30日に解除)に指定された地域に居住していた被害者であり、本件では、同区域から避難しなかった者(滞在者)及び避難後帰宅した者(帰還者)に対する精神的損害に対する慰謝料が主たる争点の一つとなっていた。



本件について、センターの仲介委員が示した和解案では、滞在者及び帰還者の精神的損害に対する慰謝料について、平成23年3月11日から同年9月30日までは月額10万円、平成23年10月1日から平成24年2月29日までは月額8万円とし、その理由として、同地域における本件事故後の生活は、非常に不便で、日常生活が著しく阻害されており、避難生活に匹敵する程度に不自由なものであったとし、滞在者、帰還者及び中間指針にて避難等対象者から除外された平成23年6月20日以降に避難した者であって子ども・妊婦等でない者についても、避難を余儀なくされた者と同様に月額による慰謝料を認めるべきとした。



当連合会は、本年4月20日付け会長談話において、本和解案については、滞在者についても、その精神的苦痛を避難者のそれに匹敵すると評価した上でおおむね同等の慰謝料を認めた点は画期的であるとして高く評価したが、この度の和解案受諾によって、審査会が明確に示さなかった賠償の対象者の範囲について新たな指針が確立されたものと考える。



本件について、東京電力は、当初センターが示した回答期限を3週間余り過ぎてようやく本和解案を受諾した。本件申立事件は6世帯の代表者をもとに審理を行ったものである。本和解案は、これらの審議をもとに和解協議の枠組みを示したものであり、実際に34世帯、130名の具体的和解金額は今後協議していくことになるが、東京電力においては、今後、本件の個々の申立人に対する具体的な和解協議に、迅速かつ誠実に対応することを強く求めるものである。

 

2012年(平成24年)6月8日

日本弁護士連合会
 会長 山岸 憲司