福島復興再生特別措置法成立に関する会長声明

本日3月30日、参議院本会議において福島復興再生特別措置法案が可決され、特別措置法が成立した。



本法案は2月10日に政府から提案され、衆議院において、民主党、自由民主党及び公明党の修正協議の結果、全会一致で衆議院本会議を通過し、本日参議院で可決、成立したものであるが、3党による協議によって、主に下記の点が修正された。



(1) 原子力政策を推進してきた国の社会的責任を明記した。



(2) 福島の復興及び再生に関する施策について、住民一人一人が豊かな人生を送ることができるようにすることを旨とし、福島の地方公共団体の自主性及び自立性を尊重しつつ、さらに福島の地域コミュニティの維持に配慮して行うことを明記した。



(3) 放射性物質による汚染の状況及び人の健康への影響等に関する正確な情報の提供を明記した。



(4) 放射線による被ばくに起因する健康被害が発生した場合に、保健、医療及び福祉にわたる措置を総合的に講じることを明記した。



(5) 国が健康管理調査のために福島県が設置する基金に、予算の範囲内において必要な財政上の措置を講じるものとした。



当連合会は2月16日付けで「福島の復興再生と福島原発事故被害者の援護のための特別立法制定に関する意見書」を取りまとめ、各政党に働きかけを行ってきたところであるが、上記の修正については、当連合会の意見の趣旨にも沿ったものであり、一定の前進であると評価するとともに、まずは関係者の努力に敬意を表したい。



一方で、本特別措置法には、まだ幾つかの課題が残されていることも指摘しなければならない。



第1に、上記の当連合会意見書で提言しているような、被害者に対する生活給付金等の支給などの生活再建支援制度が具体的に盛り込まれていないこと。



第2に、上記(5)について、「予算の範囲内」という文言が明記されている点については、国の社会的責任に鑑み、必要な施策に対しては財政的措置を十分に行うべきであること。



第3に、本特別措置法は、福島県の住民だけを対象としているが、県外に避難した者又は一定の放射線量が検出された福島県外の地域の住民に対する施策については触れられていないこと。



これらの課題に関して、3月14日に野党から「平成二十三年東京電力原子力事故による被害からの子どもの保護の推進に関する法律案」が、さらに、3月28日に民主党から「東京電力原子力事故の被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律案」(以下「民主党法案」という。)が参議院にそれぞれ提出されている。これらの法案は本特別措置法に基づく被害者支援のための基本法案であり、上記課題の解決に資すると考え得るものであることから、当連合会は、与野党において十分なすり合わせを行った上で、直ちに法案を成立させ、国の基本方針を確立することを求めるとともに、次のステップとして、民主党法案第4条にあるとおり、政府は「生活支援等施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置」を速やかに講じ、一刻も早く被害者救済のための具体的施策を図ることを強く求めるものである。

 

2012年(平成24年)3月30日

日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児