「秘密保全法制」の検討にあたって会議議事録が作成されていないことについての会長声明

2011年10月7日、政府における情報保全に関する検討委員会は、秘密保全法制を制定すべきことを決定した。同委員会は、秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議(以下「有識者会議」という。)が取りまとめた「秘密保全のための法制の在り方について(報告書)」をそのまま受け容れ、同報告書に沿った内容で秘密保全法制の制定を決定したものである。現在、政府において秘密保全法制定に向けて準備が進められている。


しかし、この有識者会議について、その議事録が作成されていないことが明らかとなった。


秘密保全法制は、国民主権原理を破壊し、知る権利等の人権を侵害するものであり、国民に与える影響は著大である。このことは、当連合会が本年1月11日付け「秘密保全法制に反対する会長声明」で明らかにしているとおりである。日本国憲法が定める国民主権原理は、国民が国政についての重要情報を知らされることを前提として初めて成り立つものである。よって、秘密保全法制について検討する有識者会議の議事録の作成及び公開は、国民主権原理からの当然の要請である。


また、中央省庁等改革基本法第30条第5項は、審議会等(国家行政組織法第8条に規定する合議制)について、「会議又は議事録は公開することを原則とし、運営の透明性を確保すること」としており、同法を受けた「中央省庁等改革の推進に関する方針」(平成11年4月27日中央省庁等改革推進本部決定)では、「会議又は議事録を速やかに公開することを原則とし、議事内容の透明性を確保する」としている。有識者会議の議事録不作成がこの方針の趣旨に反することは明らかである。


さらに、2011年4月以降の議事録については、公文書等の管理に関する法律(以下「公文書管理法」という。)の規定上、議事録の作成が不可欠であった。すなわち、公文書管理法第4条は、法令の制定又は改廃及びその経緯については、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、処理に係る事案が軽微なものである場合を除いて文書を作成しなければならないことを定めている。


有識者会議における議事は、秘密保全法制の制定の是非等にかかる意思決定に至る過程の根幹をなすものであり、公文書管理法によって作成を義務付けられている場合に該当することは明白である。


さらに、当連合会は、2010年1月22日、当時秘密保全法制について検討していた情報保全の在り方に関する有識者会議及び内閣総理大臣に対して、「情報保全の在り方に関する有識者会議の透明化についての要望書」を提出し、秘密保全法制の検討に関わる有識者会議の議事録の作成及び公開を求めていたところでもある。


以上のことから、有識者会議での議事録が作成されておらず、議事の正確な内容が公開もされていないことは、憲法の定める国民主権原理及び公文書管理法第4条等に反するものであり、極めて遺憾である。


よって、当連合会は、政府に対して、有識者会議について速やかに録音テ-プ、メモ等の存否を明らかとし、関係者の調査を行うなどして議事録を作成し、これらを公開することを求める。 

 

2012年(平成24年)3月14日

日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児