東京電力に対し原子力損害賠償紛争解決センターによる和解仲介案の尊重義務を果たすことを求める会長談話

政府は、原子力損害賠償支援機構及び東京電力株式会社(以下、「東京電力」という。)から本年2月3日付けで申請された特別事業計画の変更の認定申請について、2月13日、同申請を認定した。



これに伴って、昨年11月4日に認定された特別事業計画及び今回の同計画の変更により総額約1兆6000億円もの国費が損害賠償資金として東京電力に対し資金交付されることになる。



この特別事業計画の変更に伴い、東京電力は、改めて「和解仲介案の尊重」をうたい、その内容も、「被害者の方々の立場に立ち、東電として、審理の円滑化への協力を始め、紛争処理の迅速化に積極的に貢献し、原子力損害賠償紛争解決センターから仲介案を示された場合には、これを尊重して対応する。また、損害項目ごとの部分的な和解を受け入れる等、お支払いの迅速化に努める。(下線部は変更部分)」と変更しており、更に一歩踏み込んだ内容となっている。



ところが、福島県大熊町から東京都内に避難している男性が原子力損害賠償紛争解決センター(以下「センター」という。)に昨年9月1日に申立てを行った第1号事件について、昨年12月27日にセンターの仲介委員が示していた和解仲介案に対して、東京電力は様々な条件を付けるなどして、今日に至るまでなお和解仲介案を受諾せず、仲介委員が和解仲介案を提示してから実に50日以上もの期間が徒過し、この間申立人である被害者は全く救済されていない。他の事案においても、東京電力は、財物価値喪失等や中間指針に具体的記載のない損害の賠償請求について和解協議に消極的、かつ、事件全般につき認否留保が多く、そのために和解解決が進んでいないと指摘されている。



特別事業計画は、政府及び国民との約束であり、この度の変更により更に多額の国費が東京電力に対し投入される以上、東京電力には、「和解仲介案の尊重」を始めとした「5つのお約束」を誠実に遵守する義務がある。


当連合会は、改めて、東京電力に対して、積極的に和解協議に応じるとともに、センターの仲介委員が和解仲介案を示した場合には、原則としてこれを尊重し、迅速かつ誠実に和解仲介案を履行するなど、特別事業計画に記載された事項を確実に遵守し、一刻も早い被害者の救済を図るために、最善の努力を行うことを強く求める。 
 

2012年(平成24年)2月15日

日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児