法曹養成制度の全体的な見直しと給費制の維持に関する会長声明

本年12月9日、臨時国会は閉幕した。当連合会が求めていた、司法修習生の給費制の存続については、実質的に継続審議の扱いとなった。

 

今国会では11月4日、政府は貸与制の下で修習資金の返済が困難な者について返還を猶予する裁判所法の一部改正案を提出したが、これに対し公明党から、2013年10月31日までに様々な問題点が指摘されている法曹養成に関する制度を見直し、その間は給費制を維持する等とする修正案が提出され、いずれも12月6日の衆議院法務委員会で質疑が行われたものの、会期末の9日、継続審議となった。

 

6日の法務委員会での審議は、司法修習制度の本質や法曹養成制度が抱える問題点、司法試験の合格者の問題等、極めて重要な論点、示唆を含むものであった。

 

つまり、

 

  1. 現行の司法修習制度は、新憲法の人権保障の理念の下に、司法制度を担う法曹三者を対等・平等に国が養成する統一修習制度として60年以上にわたり営まれてきたものであって、給費制はこの統一修習制度と不可分の関係にあること。
  2. 新たな法曹養成制度には、法曹志願者が大幅な減少をしているとの大きな問題があり、その原因として司法試験の合格率の低迷、法科大学院の学費に加え司法修習貸与制導入による経済的負担、新人弁護士の就職難と経済的困難などが指摘できること。
  3. さらに、5年間3回の受験制限が法曹志望者に大きな委縮効果をきたしており、その改善が必要であること。
  4. 現在年間2000名程度まで増員された司法試験合格者のうち、少なくない者が法曹として活躍できない事態が生じており、合格者の減少を図り、法曹人口増加のスピードを低減する必要があるのではないか、などである。

 

この国会審議は、当連合会の問題意識とも共通するものである。当連合会は、本年10月28日付け会長声明でも、「修習資金の取扱を含む法曹養成制度全体について、制度的な裏付けを持った見直し作業を直ちに開始し、地域適正配置に配慮しつつ法科大学院の統廃合と大幅な定数削減、受験回数制限の緩和、修習開始時における集合的な修習などを柱とする根本的な改革を進めるべきであると考える」と提案している。また、司法試験合格者数についても、本年3月27日の法曹人口政策に関する緊急提言において「当面の緊急対策として、司法試験合格者数を現状よりさらに相当数減員することを求める」との見解をまとめている。

 

当連合会は、来年1月に召集される通常国会で、早期に裁判所法の一部改正案についての審議を尽くし、早急に法曹養成制度の見直しを行うとともにその間は給費制を維持するとの上記修正案に沿った修正を加えたうえ成立させることを強く求める。

 

2011年(平成23年)12月22日

日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児