女性と沖縄県民の尊厳を踏みにじる前沖縄防衛局長発言に抗議する会長声明

2011年11月28日、防衛省の田中聡沖縄防衛局長(当時)は、報道陣との非公式の懇談会の席で、米軍普天間飛行場代替施設建設の環境影響評価(アセスメント)の「評価書」の年内提出について、「犯すときに、『これから犯しますよ』と言いますか。」と発言したと報道された。

 

およそ公務員が、女性の人格の尊厳と人権を踏みにじる重大な性犯罪を容認するがごとき発言を行うのは言語道断であり、田中前局長発言は女性に対する著しい侮辱にほかならない。

 

そして、この発言は、日本政府が沖縄県民・地元住民の強い反対を押し切って、米軍普天間飛行場移設を押し進めることに関連して発言されているが、沖縄への基地負担の一層の押し付けを女性に対する凌辱に例えて発言することは、女性と沖縄県民に対する二重の蔑視であり、到底許されるものではない。

 

日本全国の米軍専用基地の74%が集中する沖縄は、1995年の少女暴行事件を始め、米兵による性犯罪の犠牲に苦しみ続け、過大な被害と負担を背負ってきた。上記発言とその後の政府による米軍普天間飛行場代替施設建設(名護市辺野古)の方針は、米軍基地の負担を押し付けられ、女性をはじめとする県民の人権が蹂躙され続けてきた沖縄の実情に対し、政府が全く理解をすることなく、さらなる基地負担を押し付けようとする問題の構図を改めて浮き彫りにした。

 

日本政府は本年11月29日に田中前局長を更迭したが、あらためて政府の姿勢が問われている。

 

当連合会は、田中前局長の発言に強く抗議するとともに、日本政府に対し、沖縄の米軍基地が引き起こす住民への犠牲を直視し、人権保障を基本原理とする憲法の精神に則り、これ以上の基地負担を押し付けることなく、米軍基地の整理縮小にこそ取り組むよう要請するものである。

 

2011年(平成23年)12月9日

日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児