消費者事故等の調査体制の整備についての会長声明

本年10月7日、消費者庁は新たな消費者事故等調査体制の概要(以下「調査体制の概要」という。)を公表した。



当連合会は、既に2011年2月24日及び同年7月14日の2回にわたって消費者庁に意見書を提出し、消費者事故等についての独立した公正かつ網羅的な調査機関が設置されることを求めるとともに各意見書の趣旨の実現を要望したところであるが、真に消費者事故に対応するための調査機関として十分な機能を持つために、以下の点を盛り込むべきである。



第1に、新たな事故調査機関(「消費者安全調査会」(仮称))は、消費者事故等について、既存の行政機関からの独立性を確保するとともに、刑事・行政上の責任追及から切り離し、事故調査に専念する体制とすべきこと、公正な立場で、網羅的な対応を実現するために幅広い専門知識を効率的に活用する必要があることから、有識者からなる合議体の行政機関として整備し、本来は消費者庁から独立して内閣府の下に設置すべきと考えるが、少なくとも消費者庁における国家行政組織法第8条に基づく機関として位置付けることが必要である。



第2に、「調査体制の概要」では、新たな事故調査機関は、事故調査に必要な現場保全、報告徴収、質問、立入調査、物品集取、資料提出等の権限を持つとされているが、これらの権限は、事故調査機関が独立して公正な事故調査を実施する上で不可欠なものである。したがって、これらの権限が確実に行使されるよう、新たな事故調査機関の権限行使に従わなかった事業者等に対し、一定の制裁を課すなど強制力をもって権限行使を担保する法律規定を整備すべきである。



第3に、「調査体制の概要」では、消費者事故等に関して事故調査と刑事責任追及のための刑事手続が競合する場合の調整や体制・環境・法制度の整備方針が示されていない。しかし、事故調査のために必要な事故現場の検証や事故関与者からの事情聴取等が十分に行われることは事故調査の根幹であり、①新たな事故調査機関が、警察や検察等の捜査機関と協力して事故現場の保存や事故関係者からの客観的証拠の押収又は収集に当たり、これら客観的証拠を捜査機関と相互利用できる体制を構築すること、②新たな事故調査機関による事故関与者への事情聴取の結果の刑事手続における利用制限を明確にすることについて、早急に法制度の整備を含めた体制が確立されるべきである。



2011年(平成23年)11月24日

日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児