上場企業の企業統治(コーポレート・ガバナンス)に関する日弁連コメント
2011年11月16日
日本弁護士連合会
近時、九州電力株式会社、大王製紙株式会社、オリンパス株式会社など、著名企業の不祥事が相次いでいる。
これらは東京証券取引所市場第一部等に上場し、会計監査はもとより内部統制監査も厳重に行われていたはずの企業である。それにもかかわらず、次々とこのような不祥事を引き起こしたことは誠に遺憾である。
これらの不祥事を起こした企業は、いずれも不祥事発覚後に第三者委員会を設置し事実調査をしており、大王製紙株式会社及びオリンパス株式会社は、当連合会の提唱している「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」に基づき、第三者委員会を設置したことを公表している。このような真に独立した第三者委員会を設置して、徹底的に事実を解明し、公表することが市場の信頼を回復することにつながることは論をまたない。
しかしながら、一部上場の著名企業において次々と不祥事が発生している現状に鑑みると、このような事態を未然に防ぐために設けられているはずの現在の会社法、金融商品取引法に基づく企業統治制度や内部統制システム、情報公開制度等が十分に機能していないのではないかとの疑念を抱かざるを得ない。
かかる疑念は、市場そのものに対する信頼を失わせ、我が国経済に大きな打撃を与える可能性があり、個別の企業の例外的な事象として看過すべきではない。このような疑念を払拭するためにも、上場企業のコンプライアンス(法令遵守)体制について、制度面からの抜本的な見直しが必要であると考えられる。
今後、当連合会としては、韓国で今年立法化された、一定規模以上の上場企業に対して、遵法経営を主導する責務を負う専門家を常勤役員として設置することを義務づけるコンプライアンス・オフィサー(遵法支援人)制度なども参考にして、我が国の上場企業にふさわしいコンプライアンス体制の在り方等について具体的に提言していく予定である。