事業者の二重ローン問題解消のための「株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法案」に関する会長声明

本日、東日本大震災にかかる事業者の二重ローン解消のため、「株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法案」(以下「機構法案」という。)を修正して今国会で速やかに成立させることが、民主党、自由民主党及び公明党の3党で合意された。機構法案は、本年7月29日に参議院で野党一致で可決されたものの衆議院では与野党の考えが一致せず、先延ばしになっていたところ、今般、民主党、自由民主党、公明党及び関係者の尽力により、合意が実現したものである。



当連合会は、これまでも、本年5月19日に「東日本大震災復興支援緊急措置法案骨子案」を取りまとめ、また、7月13日には「事業者の二重ローン解消のため早期に債権買取機関を設置することを求める会長声明」を公表するなど、事業者の二重ローン問題について債権買取機関の設置を含む法制化を強く求めてきた。当連合会は、今回の合意がなされたことについては大いに歓迎するものである。



その上で、被災者の救済やコミュニティ再生のため、今回の機構法案の審議及びその運用に当たっては、以下の点が確実に実現されるよう、更なる配慮を求める。



① 救済の対象範囲を広げ、機動的に再生の意欲のある事業者に対するつなぎ融資及び新規の融資が柔軟に行われる等の実効性のある機構とすること。



② 同法案第1条に掲げたとおり、被災地域における経済活動の維持という目的を特に考慮して、被災地の雇用の創出やコミュニティの再生につながるように、厳格な方法によることなく、簡易な方式での買取価格を算定する仕組みを導入すること。



③ 国は再生支援機構の人的体制の整備や十分な買取資金の予算的裏付けを行う等の手当を行うこと。



また、政府は既に岩手県及び宮城県等において債権買取等の支援業務を行う産業復興機構の設置の準備を行っているが、機構法案成立後は、その活動を生かしながら新たに再生支援機構の設立が行われることになることから、被災者が2つの手続のどちらを選択するか迷うことのないよう、十分な情報を提供し、また2つの制度の間で緊密な調整を行い、被災地の混乱を避けながら2つの制度を軌道に乗せることが必要である。



大震災から既に7か月以上が経過しているが、被災地の復興は進んでおらず、一刻も早い機構の設置が待ち望まれている。本日召集される臨時国会においては、最優先で本法案の審議を急ぎ、一刻も早い成立及び機構の設立を図るべきである。



当連合会は、個人の二重ローン解消のための個人版私的整理ガイドライン運営委員会への専門家の派遣等に協力しており、今般の事業者向けの制度についても、再生支援機構への専門家の派遣や相談体制の整備など被災企業の支援に全面的に協力する所存である。



2011年(平成23年)10月20日

日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児