家族法の差別的規定改正の早期実現を求める会長声明
本年8月24日、大阪高等裁判所は、民法900条4号ただし書前段につき、相続が開始した平成20年を基準に考えると、「法律婚を尊重するとの本件規定の立法目的と嫡出子と非嫡出子の相続分を区別することが合理的に関連するとはいえず、このような区別を放置することは、立法府に与えられた合理的な裁量判断の限界を超えている」として、憲法14条1項、13条及び24条2項に違反して無効であると判断する決定を下した。同決定は、子の法律上の取扱いを婚外子か婚内子かにより区別することは、本人の意思によっては左右できないことによる区別となる上、婚外子の法定相続分を婚内子の2分の1とすることは、法が婚外子を婚内子より劣位に置くことを認める結果となり、法が婚外子に対するいわれのない差別を助長する結果になりかねないと指摘した。その上で、本規定を合憲とする最高裁大法廷決定(1995年7月5日)以降、最高裁判例における反対意見や補足意見が指摘するとおり、法制審議会における答申、親子関係における国民意識の多様化、諸外国における国際的な区別撤廃の進捗等の内外の環境の変化は、相続分の平等化を促しているとし、本件規定を違憲無効と宣言した。今回の決定の結論は、当連合会の多年にわたる主張と合致するものであり、画期的なものと評価する。
国連の自由権規約委員会、女性差別撤廃委員会、子ども権利委員会は、同規定に懸念を表明し、廃止することを繰り返し求めてきた。自由権規約、女性差別撤廃条約、子どもの権利条約を批准している日本政府は、本件規定を廃止する義務がある。国は、国際社会からの要請、本決定及び最高裁における反対意見・補足意見の指摘を重く受け止め、個々の相続について裁判所ごとの判断に委ねるのではなく、家族法を改正し婚外子差別を廃止すべきである。
さらに国は、民法900条4号ただし書前段の改正と同様、法制審議会における答申が指摘した選択的夫婦別姓の導入、女性のみに課されている再婚禁止期間の廃止、婚姻年齢の男女統一化についても、自由権規約委員会及び女性差別撤廃委員会から繰り返し勧告を受けているとおり、これらを全て実現すべきである。
2011年(平成23年)10月6日
日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児