特定被災地域における失業手当の給付日数延長を求める会長声明

東日本大震災の被災地における雇用情勢は依然として大変厳しい状況にある。2011年6月時点での被災3県(岩手、宮城、福島)の有効求職者数16万4285人に対して、有効求人数は8万6626人しかない。被災3県における雇用保険の基本手当(以下、「失業手当」という。)の受給者実人員は7万6978人に上っている。この失業手当については、東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律によって、個別延長給付の特例措置(最大120日延長)がとられてはいるものの、実際には延長分を含めても給付日数が210日間しかない人が多く、全体の約3割を占める。そのため、10月中旬から、失業手当が打ち切りになる人が大量に出てくる。



報道によれば、政府は第3次補正予算案において、被災自治体向けの雇用創出基金として1000億円超を計上するとされている。安定した雇用の創出は最重要課題の一つではあるが、被災地での経済・産業の復興は依然として進んでおらず、失業手当が打ち切られようとしている者すべてが直ちに安定した雇用に再就職することが見込める状況ではない。



そもそも、我が国の雇用保険制度は、2000年の法改正によって自己都合退職の場合の所定給付日数が最長330日から最長180日に大幅に短縮されるなど、切下げが行われてきた。そのため、1975年においては失業者中の受給率が87%であったものが、現在では、失業者の2割程度しか失業手当を受給できておらず、失業者の生活保障機能を十分に果たし得ていないという根本的な問題を抱えている。したがって、被保険者の範囲の拡大や受給資格の緩和、待機期間の廃止、所定給付日数の延長など、雇用保険制度そのものの拡充が抜本的な課題であるが、被災地の状況は切迫しており、特別な緊急対応が求められている。



当連合会は、2011年4月14日付けで「東日本大震災に関する第一次緊急提言」を発表し、被災地において失業手当の給付日数の延長措置を提言するとともに、そもそも失業手当の支給対象とならないような労働者については、普遍的な失業扶助制度を構築すべきことを提言したが、今般、上記の状況を踏まえ、緊急措置として、特定被災地域における失業手当の給付日数を更に延長する法改正を求めるとともに、あわせて、政府に対し、第3次補正予算案において所要の予算を計上することを求める。



被災地からは、今なお日々の暮らしにも苦しんでいる切実な声が聞かれ、被災債務(いわゆる二重ローン問題)など、解決すべき大きな課題が山積している。一日も早い復旧・復興を目指す被災地の人々を支援するため、震災対策は待ったなしの状況である。政府・国会は、被災地の要望に真摯に耳を傾け、国会を延長するなどして必要な立法措置を講じるべきである。




2011年(平成23年)9月14日

日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児