消費者庁の「財産の隠匿・散逸防止策及び行政による経済的不利益賦課制度に関する検討チーム」取りまとめに対する会長声明

本日、消費者庁は、「財産の隠匿・散逸防止策及び行政による経済的不利益賦課制度に関する検討チーム」取りまとめ(以下「取りまとめ」という。)を公表した。

 

取りまとめは、悪質商法による財産的な消費者被害の発生又は拡大を防止するための消費者庁の措置権限を消費者安全法に規定することが適当としている。

 

日本弁護士連合会は、2008年11月19日付け「消費者安全法案についての意見書」において、消費者安全法の重大事故等に取引被害を含めるべき旨の意見を述べてきたところであり、財産的事案における消費者事故に関しても、消費者被害の発生又は拡大防止のため、消費者庁が事業者に対し、事業者の行為の差し止めなど有効な行政措置をとることができるよう消費者安全法の改正を検討することに賛成である。

 

財産の隠匿・散逸防止をして被害救済を図る観点からは、日本弁護士連合会の2008年2月15日付け「『消費者庁』の創設を求める意見書」で述べたとおり、事業者の資産の凍結や凍結した資産を換価して被害者へ分配するなどの方策を含め、行政措置の対象となる事案又は行為、行政措置の発動要件、行政措置の内容並びに行政措置を行うために必要な調査権限を検討する場を早急に設け、来年の通常国会において、実効性のある法改正が実現されることを望む。

 

また、取りまとめは、財産の隠匿・散逸防止策及び行政による経済的不利益賦課制度について、消費者庁による破産手続開始申立の権限を含め、実効性ある方策について、引き続き検討を行うことが適当としている。

 

日本弁護士連合会は、破綻必至の投資・利殖詐欺事案の財産の隠匿・散逸防止策として、消費者の利益の擁護及び増進等に関する事務を任務とする消費者庁に当該事業者の破産手続開始の申立権限を認めることが適当であると考える。そこで、消費者庁にかかる権限を認めることが適切な事案の要件等について検討する場を早急に設け、来年の通常国会において、実効性のある法改正が実現されることを望む。

 

さらに、不当表示事案などを対象とする経済的不利益賦課制度は、消費者委員会集団的消費者被害救済制度専門調査会で取りまとめられた適格消費者団体等による集合訴訟制度の対象となりにくい事案について、消費者被害の発生又は拡大を防止する方策として有効であると考えられるので、かかる制度の導入に向けて引き続き検討する場を早急に設けるべきである。

 

2011年(平成23年)8月18日

日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児