諫早湾干拓訴訟長崎地裁判決に関する会長談話

長崎地方裁判所は、本年6月27日、諫早湾干拓事業(以下「本件事業」という。)で建設された潮受け堤防の南北各排水門の開門に関し、諫早湾の海水を調整池に流入させ、海水交換できるように開門操作すること(以下「開門」という。)などを諫早湾内の漁業者らが求めた裁判において、漁業者らの開門請求を棄却した。


当連合会は、本件事業に関し、1997年5月以降、会長声明及び意見書をそれぞれ2度にわたり発表して、排水門を開放し堤防内に海水を導入すること等を求め、また、本件事業の差止めを求めた仮処分申立てについても、2度にわたり会長声明を発表して、本件事業の中止と諫早湾干潟と有明海の真の再生が1日も早く実現することを求め、さらに、本件の同種の訴訟である佐賀地裁判決及び2010年12月に確定したその控訴審である福岡高裁判決に関しても会長談話を発表し、ただちに開門の準備に着手することを求めてきたところである。


ところが、本判決は、本件事業による諫早湾内の潮流の低速化、成層化、底質の悪化、貧酸素化等の漁場環境の悪化を一部認めながら、タイラギやアサリの漁場環境の悪化と本件事業との因果関係を否定し、漁業行使権の侵害の程度は大きくないとして開門を認めなかったものであり、当連合会の上記の意見書等や福岡高裁判決の判旨に照らしても到底納得できるものではなく、誠に遺憾である。


しかし、本判決の結論にかかわらず、国が福岡高裁判決の確定によって、開門する義務を負っていることに変わりはない。


当連合会は、福岡高裁の判決が確定したにもかかわらず、国は従前の方針である開門調査のためのアセスメント手続を継続するだけで、開門への具体的な準備を進めていないこと、そして、国が代替水源などについて具体的な対策を示さないため不安を持った農業者などから国に対して開門の差止めを求める裁判が提起されるに至ったことをふまえて、再度、国に対し、具体的な対策を示したうえで、開門する準備にただちに着手し、有明海再生のために第一歩を踏み出すことを、強く求めるものである。


2011年(平成23年)7月7日

日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児