被災者の相続放棄等の熟慮期間に関する会長談話

当連合会は、本年5月26日付の「相続放棄等の熟慮期間の伸長に関する意見書」において、東日本大震災により相続が開始された場合の相続放棄等の熟慮期間について、現行民法では相続の開始があったことを知った時から3カ月と定められているところ、これを1年に伸長する特別の立法措置を早急に講ずべきであるとの意見を法務大臣宛に提出しているが、間もなく震災から3カ月が経過しようとしている。

相続放棄等またはその熟慮期間伸長の申立手続を行う際は、被相続人及び申立人の住民票除票や戸籍謄・抄本が必要なところ、被災地では6月に入ってもなお役所の機能が完全には回復しておらず、いまだ申立に必要な戸籍等が発行できていない地域もある。


この点、法務省は、相続放棄等の申立前の入手が不可能な戸籍等がある場合には、申立後に追加提出することもできる旨を公表しているが、このことを知らずに不利益を被る被災者が出ないよう、被災地のみならず被災者の避難先地域においても、全力をあげてこの点の周知徹底を図るべきである。


さらに、被災者の負担している不合理な債務からの解放(いわゆる「二重ローン問題」)については、当連合会も提言を取りまとめ、要請を行っているところであるが、政府や各政党においてその具体的施策が検討されている状況に鑑み、家庭裁判所においてもこの熟慮期間については柔軟に取り扱われるべきである。


現在、国会ではこの問題について議員立法の動きが進行中であると聞く。速やかに、立法により必要かつ相当な救済措置がとられるよう、政府並びに国会に強く求めるものである。


2011年(平成23年)6月7日

日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児