裁判員法施行二周年を迎えて(会長談話)

本日、裁判員法(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律)が施行されて、二周年を迎えました。



最高裁が公表したアンケート結果によると、制度施行二年目も、95パーセントを超える裁判員経験者が、裁判に参加したことについて「よい経験と感じた」と回答しました。また、「審理内容は理解しやすかった」と回答した経験者も60パーセントを超えました。制度施行二年目も、制度の運用が順調に推移しているといえます。

 

また、裁判員裁判を契機とする直接主義・口頭主義の実質化が引き続き推し進められ、法廷で「見て聞いて分かる」審理が実践されています。従来の「調書裁判」と呼ばれた刑事裁判の在り方が着実に変化しています。

 

一方、制度施行二年目においては、公訴事実や責任能力が争われる事件に加えて、検察官が死刑を求刑した事件や、第一審において裁判員の加わった合議体により無罪判決が言い渡された事件の控訴審の審理も開かれました。

 

今後も、様々な事件を通して、検察官からの証拠開示が適切に行われているか、被告人の防御準備に必要な期間が十分確保されているか、公判廷における証拠調べについてどのような運用がなされているかなどを中心に、制度の運用を検証していく必要があります。さらに、特に第一審の裁判員裁判において無罪または認定落ちの判決が言い渡されて検察官が控訴を申し立てた事件について、控訴審における審理の在り方を注視する必要があります。

 

裁判員法の施行前から現在に至るまで、当連合会では、法廷技術を学ぶ実演型研修、弁護戦略を学ぶ実践的研修、事例を検討する経験交流会等、裁判員裁判を担う弁護士向けに様々な取組を継続的に行ってきました。今後も引き続きこうした取組に注力することにより、弁護の質の向上に努めます。

 

また、当連合会では、裁判員法附則第9条に基づくいわゆる三年後検証に向けて、裁判員裁判の運用状況の検証を踏まえた制度改革提言案の策定作業に取り組んでいます。被疑者・被告人の権利が十分保障され、そしてより無罪推定に忠実な刑事手続の実現に向けて、この三年後検証作業にも力を尽くします。


2011年(平成23年)5月21日

日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児