家畜伝染病予防法の一部を改正する法律に関する会長声明

2010年に宮崎県下で発生した口蹄疫の被害を受けて、本日、家畜伝染病予防法の一部を改正する法律が参議院で可決、成立した。


今回の口蹄疫の被害は極めて甚大かつ深刻で、牛・豚等の家畜約29万頭が殺処分され、5町で家畜が全滅し、畜産業者はもとより関連業種をはじめ地域のあらゆる産業が大きな打撃を受けた。当連合会は、宮崎県口蹄疫対策本部を設置し、現地関係者との対話や現地調査の結果を踏まえて「宮崎県口蹄疫終息後の復興に関する会長談話」(2010年9月)を公表し、さらに、「宮崎県口蹄疫被害に関する立法提言」(2011年2月)をとりまとめ、農林水産大臣に対し提出したところである。


今回の改正法は、被害者に対して家畜の評価額全額を補償するなど当連合会の提言内容を一部盛り込んでおり、評価できる点もある。


しかしながら、同改正法においては、都道府県の負担や家畜農家の責任が重くなっているのと比較すると、国の責任の定めはほとんど無い。また、被害者に対する救済措置が不十分であり、入国時の水際対策等の防疫体制の強化、家畜防疫員の増員、必要な税制措置などは、附帯決議に盛り込まれたに過ぎず、これらも問題の解決に至っていない。


当連合会としては、今後も、国に対し、残された問題が解決するよう改正法の適用及び運用の工夫を求め、また、被害者の救済についてできる限りの措置を講じることを求める。

さらに、改正法によって、今回の口蹄疫被害が軽減され、畜産農家らの事業再建等の復興が進むよう今後の運用状況を注意深く見守っていく所存である。

 

2011年(平成23年)3月29日

日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児