少年に対する死刑判決の確定に関する会長声明

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1994年(平成6年)秋、大阪、愛知、岐阜の3府県で少年らのグループによって計4人の若者を死亡させた、いわゆる連続リンチ殺傷事件の被告人ら3人の死刑判決に対する上告が、本日最高裁判所において棄却された。


1983年(昭和58年)7月8日のいわゆる永山最高裁判決以降、犯行当時少年に対する死刑判決が確定しているのは2人だけであるところ、本日の上告棄却により、犯行当時少年であった被告人ら3人に対する死刑判決が確定することになる。


死刑については、死刑廃止条約が1989年12月15日の国連総会で採択され(1991年発効)、1997年4月以降、国連人権委員会(2006年国連人権理事会に改組)は「死刑廃止に関する決議」を行い、その決議の中で日本などの死刑存置国に対して「死刑に直面する者に対する権利保障を遵守するとともに、死刑の完全な廃止を視野に入れ、死刑執行の停止を考慮するよう求める」旨の呼びかけを行った。また、2008年10月には国際人権(自由権)規約委員会は、日本政府に対し、「政府は、世論調査の結果に拘わらず死刑廃止を前向きに検討し、必要に応じて国民に対し死刑廃止が望ましいことを知らせるべきである。」との勧告をしている。


また、死刑廃止国は着実に増加し、1990年当時、死刑存置国96か国、死刑廃止国80か国(法律で廃止している国と過去10年以上執行していない事実上の廃止国を含む。)であったのに対し、現在は、死刑存置国58か国、死刑廃止国139か国(前同)となっており、死刑廃止が国際的な潮流となっていることは明らかである。


加えて、1994年に我が国で発効した「子どもの権利条約」で引用されている少年司法運営に関する国連最低基準規則(いわゆる北京ルールズ)では「少年とは各自の法律制度の下において、犯罪について成人とは違った仕方で取り扱われている児童又は若者をいう」と規定され、「死刑は少年が行ったいかなる犯罪についても科してはならない」と規定しているところである。


このような状況の下で、最高裁判所が犯行時少年であった被告人3人に対し、少年事件の特性に何ら考慮を払うこともなく、死刑判決を確定させることは誠に遺憾であるといわねばならない。


当連合会は、2002年11月に「死刑制度問題に関する提言」を発表し、死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし、また死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間、死刑確定者に対する死刑の執行を停止する旨の時限立法(死刑執行停止法)の制定を提唱し、政府に対し、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを求めているところである。本判決を契機として、改めて、政府に対し、死刑執行停止法の早期制定と死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを求めるものである。


2011年(平成23年)3月10日


日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児