諫早湾干拓訴訟福岡高裁判決に関する会長談話
福岡高等裁判所は、2010年12月6日、国に対し、諫早湾干拓事業(以下「本件事業」という。)で作られた潮受け堤防の南北排水門の常時開放(以下「開門」という。)について、判決確定から3年以内に開門し、以後、5年間にわたって開門を継続することを命じた佐賀地裁判決を支持して、国の控訴を棄却する判決を言い渡した。
1997年4月の潮受堤防による閉め切り以降は、「有明海異変」と呼ばれる重大な海洋環境の変化のなか、2000年のノリ養殖業の歴史的な大不作をはじめとして深刻な漁業被害が生じ、その被害は年を追うごとに深刻になっている。
本判決は、潮受け堤防による締切りと諫早湾近傍場の一審原告らの漁業被害との因果関係を認めたうえで、本件各排水門を常時開放しても防災上やむを得ない場合にこれを閉じることによって、その防災機能を相当程度確保できるため、現時点において、本件各排水門を常時開放することによって過大な費用を要することとなる等の事実は認められないこと等の理由で、上記のような開門を求めた。
当連合会は、本件事業に関し、1997年5月以降、会長声明及び意見書をそれぞれ2度にわたり発表して、排水門を開放し堤防内に海水を導入すること等を求め、また、本件事業の差し止めを求めた仮処分申立てについても、2度にわたり会長声明を発表して、本件事業の中止と諫早湾干潟と有明海の真の再生が1日も早く実現することを求め、さらに、本件の原審である佐賀地裁判決に関しても会長談話を発表し、ただちに開門の準備に着手することを求めてきたところである。
本判決は、当連合会が求めてきた開門を命じる原判決を支持するものであり、当連合会は、これを高く評価する。
当連合会は、国が上告等を断念し、佐賀地裁判決からすでに2年以上も期間が経過していることをふまえて、今こそ、ただちに開門する準備に着手し、有明海再生のために第一歩を踏み出すことを強く求めるものである。
2010年(平成22年)12月6日
日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児