「少年院監督委員会(仮称)」の設置を求める会長談話~広島少年院暴行事件判決を受けて~

昨日、広島少年院暴行事件に関し、同少年院の元首席専門官に対し、第一審の広島地方裁判所において判決が言い渡された。


この暴行事件を契機に、法務省内に「少年矯正を考える有識者会議」が本年1月に設置され、少年矯正のあり方につき現在も検討が続けられている。


非行に陥った少年たちの立ち直りのための教育の場であるべき少年院において、矯正教育の範囲を逸脱した暴行行為が行われることがないよう、十全な対策が講じられなければならない。


少年院・少年鑑別所の改革へ向けた当連合会の意見は、すでに本年10月19日に発表した「少年矯正の在り方に関する意見書」で明らかにしたところであるが、少年院等において、少年の人権保障が図られる処遇が行われるよう、少年院法を抜本的に見直し、適切な処遇を行うために必要な体制作りを進め、職員教育を充実させるとともに、適切な処遇の実施を担保するためには、不服申立制度や第三者の目で処遇内容を監視する制度の確立が不可欠である。


この点、現行法下では成人の刑事施設においては施設ごとに設置され、活発に活動している刑事施設視察委員会に相当する仕組みが、少年院等に存在しないことは、重大な問題である。すみやかに少年院法を改正し、児童精神科医、弁護士、地域住民などの第三者によって構成され、実効的に活動できる「少年院監督委員会(仮称)」を設置すべきである。


「少年院監督委員会(仮称)」は、適宜少年院の内部に立ち入り、必要に応じて資料の開示も受け、少年院の処遇や運営の実情を十分に把握し、少年の人権保障の観点から少年院の処遇や運営に意見や勧告を行う機関として法律の根拠に基づいて設置されるべきであるが、それは、決して形式的な存在であってはならず、少年が、身近に感じ、安心して声を上げられるような実のある活動を行うことが求められる。


当連合会は、「少年院監督委員会(仮称)」の設置を強く求めるとともに、少年院等の改革に向けて引き続き取り組む所存である。


2010年(平成22年)11月2日


日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児