司法修習給費制に関する「裁判所法の一部を改正する法律」施行にあたっての会長談話
司法修習生に対する給費制を廃止し、貸与制への移行を定める「裁判所法の一部を改正する法律」が本日施行された。
この間、当連合会は、司法修習生に対する給費制維持を最重要課題の一つに掲げて、市民団体、消費者団体や労働団体による「司法修習生の給与の支給継続を求める市民連絡会」や法科大学院生、司法修習生、新人若手弁護士らによる「ビギナーズネット」と連携・協力し、法施行前の法改正の実現を求めて、請願署名活動、市民集会の開催、国会議員要請等の活動を行ってきた。9月、10月に複数回開催された院内集会には多数の国会議員及び秘書の方々の参加があり、暖かい励ましの言葉をいただいており、国会議員のなかに着実に理解が拡がってきていることを感じている。また、給費制の存続を求める請願署名は約5ヶ月間で60万筆余が集まり、市民連絡会が行っている賛同の呼び掛けも、800あまりの団体等からの賛同をいただき、市民の中にも経済的な事情によって法曹志望を断念させないため給費制存続を求める声は強まっている。
与野党間の調整が進んでいないことから、本日をもって裁判所法が施行されることになったが、当連合会は今臨時国会での給費制の継続をあきらめていない。去る10月22日の自民党法務部会の後も、民主党、自民党、公明党をはじめとする与野党間では、合意点を探るための折衝が継続している。
法科大学院志願者数は6年前の約4分の1にまで減少し、法科大学院の社会人入学者の割合は約半分に減少している。また、貸与制のもとで、給与が支給されないこととなった新64期司法修習生の中には、無収入であることを理由に実務修習期間中の赴任地におけるアパートの賃貸契約を締結することが困難となるなどの事態も既に生じている。
このような現実の中で、研修期間中の修習専念義務が課せられ、何ら収入の途がない中で新たな負債を抱えなければならないという貸与制実施を強行することは、法曹志望者への将来への不安を増幅させ、経済的な理由によって志望を断念することに拍車を掛けることは疑いない。これは法曹界に多様な人材を求めた司法改革の理念を著しく損なう事態である。
当連合会は、ここに改めて今臨時国会において、与野党間の話し合いによって、貸与制の導入を少なくとも1年間延長し、給費制が継続されている環境のもとで、法曹志望者に対する経済的支援のあり方を含めた法曹養成制度全般に関する改善方策が検討されるよう、施行された「裁判所法の一部を改正する法律」の再度改正を強く求めるものである。
2010年(平成22年)11月1日
日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児