家賃等弁済情報提供事業の禁止を含む抜本的見直し求める会長声明

当連合会は、家賃等弁済情報提供事業を容認する「賃借人の居住の安定を確保するための家賃債務保証業の業務の適正化及び家賃等の取立て行為の規制等に関する法律案」(以下「本法案」という。)に対して問題点を指摘し、抜本的な見直しを求めていた。本法案は、必ずしも悪質とはいえない家賃不払いの履歴によって民間賃貸住宅市場から閉め出され住宅の確保ができなくなること、入居差別や他のデータとの照合による架空請求、ヤミ金等の悪徳業者に転売されることによる悪用等が懸念されるものである。


ところが、家賃債務保証業者による任意団体が本年2月から弁済履歴情報を共有するシステムを稼働させたことにより、上記の懸念は現実化しているといわざるをえない。


現実に、減収により家賃を滞納した者が、より低額な家賃の物件に転居しようとしても、その家賃滞納を理由に保証委託契約及び賃貸借契約を拒否されてしまい、ますます家賃滞納が増えるという悪循環が発生している。


また、ある家賃等弁済情報提供事業者は、家賃滞納履歴のほか、破産や債務整理をしたかどうかや、敷金返還をめぐるトラブルがあったかどうかなどの情報も収集・提供すると喧伝している。前者は、貸金業者から得た信用情報の悪用というほかないが、現に信用情報上の問題を理由に契約を拒絶された事例も報告されている。他方、後者は、賃借人の正当な権利行使を理由とする不当拒否を招来し、ひいては、賃借人の正当な権利行使に対する重大な萎縮効を生じかねない。


このように、家賃滞納情報等のデータを収集・提供することは、それ自体、居住の安定を阻害するものであって、本法案における家賃等弁済情報提供事業に対する規制のみでは、これを除去することは不可能である。


したがって、当連合会は、再度衆議院での継続審議及び参議院での再審議において、本法案を修正し、家賃等弁済情報提供事業の禁止を含めた抜本的見直しをすることを求める。


2010年(平成22年)9月24日


日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児