法務省の取調べの可視化に関する今後の検討方針に関する会長声明

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法務省は、本日、「被疑者取調べの録音・録画の在り方について~これまでの検討状況と今後の取組方針~」(以下「法務省方針」という。)を公表した。法務省方針は、2009年10月以来、省内に設けられた勉強会及びワーキンググループにおいて「被疑者取調べの全面的な可視化を基本として、議論・検討を進めてきた」結果として、公表されたものであるという。また、法務省方針によれば、同勉強会及びワーキンググループにおいては、「全事件・全過程の録音・録画を実施することを基本として検討を進めてきた」としており、その出発点は当連合会の基本方針を受け容れたものと評価できる。


しかし、法務省方針は、「録音・録画の対象とする取調べの範囲についても検討を加える」などと可視化を後退させるかのような議論をしている。取調べの全過程の録画が不可欠であることは、すでに足利事件など幾多の冤罪事件からみても明らかである。


また、法務省方針は、「必要に応じて、新たな捜査手法の導入などについても検討する」ともいう。そして、その検討成果の取りまとめを2011年6月以降とする。しかし、取調べの可視化(取調べの全過程の録画)は、いかなる捜査手法であるかにかかわりなく実現すべきものである。なお1年もの検討を行い、その立法を遅らせる理由も明確ではない。


法務省は、密室取調べが度重なる冤罪を生んできたことを真摯に受け止め、速やかに取調べの可視化の実現のための立法作業を開始すべきである。そして、裁判員裁判対象事件については、立法をまつまでもなく取調べの可視化の試行を実施することを求める。

 

2010年6月18日
日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児