カネミ油症事件被害者の抜本的救済を求める会長談話

3月31日、「油症患者健康実態調査の解析に関する懇談会」による「油症患者に係る健康実態調査結果の報告」が発表された。同報告によると、いまだに多くの被害者が悲惨かつ深刻な問題を抱えながら生活を続けていることが確認された。


当連合会は、カネミ油症事件の被害者からの申立てを受け、2006年4月17日、国のカネミ油症被害者に対する人権侵害性を認定したうえで、国に対し、立法措置も含め、(1)被害者に対する仮払金債権を一律に全額免除する措置をとるとともに、(2)国が主体となったカネミ油症の認定手続の確立、(3)国が主体となったカネミ油症の治療方法の研究・開発の推進、専門的知見のある医師等の養成、受診しやすい専門的医療機関の整備、各医療機関に対するカネミ油症の理解及びその治療方法の周知並びに(4)医療費、医療関連費及び生活補償費の支給等の方策をとるよう勧告した。


その後、2007年6月1日、「カネミ油症事件関係仮払金返還債権の免除についての特例に関する法律」が成立し、前記(1)の仮払金債権の問題については一定の解決を見ることとなったものの、前記(2)から(4)までの問題については、未だ立法措置は講じられておらず、カネミ油症事件の根本的な解決はなされていない。


カネミ油症事件発生から40年以上を経過した現在でもなお、悲惨かつ深刻な被害が続いている現状に鑑みると、国は、これ以上被害者を放置し、被害者に対する人権侵害を継続させてはならないのである。


当連合会は、あらためて、国に対し、すべてのカネミ油症事件の被害者の抜本的な救済のため、医療費、医療関連費及び生活補償費の支給等を始めとした前記2006年4月17日勧告の内容を早急に実現すべく具体的な方策を一日も早くとることを強く求める。


2010年(平成22年)5月26日


日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児