高校無償化法案の対象学校に関する会長声明


 

今国会に提出された、いわゆる高校無償化法案(「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律案」)について、朝鮮民主主義人民共和国に対する制裁措置の実施等を理由に、朝鮮学校を対象校から外すか否かが、政府内で検討されている。

 

しかし、本法案の趣旨は、「高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の機会均等に寄与する」(法律案の理由)ことにある。教育を受ける機会は、政治・外交問題に左右されてはならず、朝鮮学校に通う子どもたちについても変わることなく保障されるべきものである。

 

また、朝鮮学校については、教育課程等の確認ができないとの考え方も報道されているが、朝鮮学校の教育課程に関する情報は、各種学校の認可を受ける際に必要に応じて提出され、朝鮮学校自らがホームページ等でも公開しているのであるから容易に調査可能であり、現に、ほとんどの大学は朝鮮学校卒業生に入学資格を認めている。

 

朝鮮学校に通う子どもたちが本法案の対象外とされ、高等学校、専修学校、インターナショナル・スクール、中華学校等の生徒と異なる不利益な取扱いを受けることは、中等教育や民族教育を受ける権利にかかわる法の下の平等(憲法第14条)に反するおそれが高く、さらには、国際人権(自由権・社会権)規約、人種差別撤廃条約、子どもの権利条約が禁止する差別にあたるものであって、この差別を正当化する根拠はない。

 

当連合会は、高校無償化法案の適用において朝鮮学校が不当に排除されることのないように強く求めるものである。

 

2010年3月5日
日本弁護士連合会
会長 宮﨑 誠