葛飾ビラ配布事件に関する日弁連コメント
2009年(平成21年)11月30日
日本弁護士連合会
本日、最高裁判所は、葛飾ビラ配布事件について上告を棄却する判決を言い渡した。
本件については、東京地方裁判所が、ビラ投函のためのマンション共用部分への立入りについて刑事罰の対象とすべきであるという社会通念は確立しているとはいえないなどとして無罪にしたが、東京高裁が、マンションの構造、管理・利用状況から、居住者が部外者の共用部分への立入りを禁止しているため住居侵入罪に該当するなどという理由で有罪判決を下していた。
日弁連は、2009年11月6日、第52回人権擁護大会において「表現の自由を確立する宣言」を行い、「ビラの配布等を、警察、検察及び裁判所が過度に制限することは、(中略)市民の表現の自由の保障一般に対する重大な危機である。」として、「裁判所は、『憲法の番人』として市民の表現の自由に対する規制が必要最小限であるかにつき厳格に審査すること」などの提言をしたところである。
また、国際人権(自由権)規約委員会も、2008年10月、「政府に対する批判的な内容のビラを私人の郵便受けに配布したことに対して、住居侵入罪もしくは国家公務員法に基づいて、政治活動家や公務員が逮捕され、起訴されたという報告に懸念を有する」旨の表明をし、日本政府に対し、「表現の自由に対するあらゆる不合理な制限を撤廃すべきである」と勧告している。
日弁連は、最高裁に対し、表現の自由の重要性に十分配慮し、国際的な基準を充足する判断を示すよう要望する。
また、本判決を契機として表現の自由の保障について国民的な議論を深めることを呼びかけるものである。
以上