「一部見直し」報道を踏まえて改正貸金業法の完全施行を求める会長声明
改正貸金業法は、2006年12月、多重債務問題解決等のため、国会において全会一致で成立し、遅くとも2010年6月までには、金利規制や総量規制等を含めて、完全施行されることとなっている。近時、一部マスコミから、「政府は金融危機の影響で個人事業主の資金繰りが悪化していることから、消費者金融など貸金業向けに強化してきた規制を緩和する方向で検討する。」と報じられ、改正貸金業法の完全施行に伴う金利規制や無担保ローンの貸付を年収の3分の1以下とする総量規制の見直しを求めている貸金業界の意向を汲んで、政府が見直しを行うのではないかとの疑念が生じている。
しかしながら、中小企業の資金繰りに関する全国の商工会議所会員へのアンケート(金融庁実施)によると、資金繰り悪化の原因は、販売不振・在庫調整の長期化等の営業要因、金融機関の融資態度・融資条件、セーフティネット貸付・保証等の信用保証協会や政府系金融機関等の対応で98.4%を占め、改正貸金業法施行の影響等のノンバンクの融資態度・動向では1.5%という結果に過ぎず、貸金業法改正の影響はほとんどない。また、そもそも貸金業法では法人向け融資について総量規制はなく、個人事業者向け融資では事業の実態・内容から返済能力が認められる場合には総量規制の例外を定めるなど、硬直的な運用を排している。
かように改正貸金業法の見直しを行う前提事実は存しない。
消費者金融や商工ローンが跋扈したのは1990年代後半からの不況による倒産や、失業の時期にセーフティネットが全く機能していなかったことによるものであり、「想定していなかった経済情勢」を理由に規制を緩めると、多重債務問題が再燃しかねない。
金融担当大臣自身も完全施行を行う方向を示しているが、当連合会は改正貸金業法を早期完全施行するよう再度求めるものである。
2009年(平成21年)11月12日
日本弁護士連合会
会長 宮﨑 誠