足利事件の再審公判にあたり改めて取調べの可視化を求める会長声明

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昨日、宇都宮地裁で、足利事件の再審第1回公判期日が開かれた。17年もの間、無実の罪で獄中に囚われ続けた菅家利和さんが、なぜ訴追され、繰り返し有罪判決を受けたのか。悲劇を繰り返さないため、その真相こそが徹底的に明らかにされなければならない。

 

その意味で重要なのは、菅家さんの取調べを録音した25時間にもわたるテープである。そのテープには、菅家さんの否認を受け入れず、誤ったDNA鑑定を前提に菅家さんを追い詰める取調官や、その追及に虚偽の自白を余儀なくされる菅家さんの様子が録音されているという。再審公判では、この取調べテープの証拠調べを含め、徹底した真相の解明が必要である。

 

また、取調べ経過の検証を可能にしたこのテープの存在自体が、取調べの可視化、すなわち取調べ全過程の録画の必要性を雄弁に物語っている。 

 

取調べの可視化については、すでに参院で2回にわたり法案が可決され、現政権党のマニフェストでも何ら条件を付すことなく、可視化が公約されている。ところが、真相解明が困難になるなどとして、取調べの可視化に反対したり、その導入のためには新たな捜査手法が必要として、可視化導入を先延ばしする動きがある。しかし、新たな捜査手法をめぐる議論の帰趨にかかわらず、密室取調べによる冤罪事件の発生という究極の人権侵害が許されてよいはずはない。自白強要とそれに基づく冤罪を防ぎ、真相に近づくために、密室は直ちに可視化されなければならない。

 

これまで密室で無実の者が犯人にされ、真犯人は野放しにされてきた。取調べの可視化こそが、密室での真実を明らかにし、事件の真相解明に資する。また、取調べの可視化こそが、捜査の信頼を高め、私たちの生活の安全も守るのである。

 

足利事件の再審開始にあたり、徹底した冤罪の原因解明を求めるとともに、直ちに取調べ全過程の録画を実行すること及び一刻も早くそれを法制化することを求める次第である。

 

2009年10月22日
日本弁護士連合会
会長 宮﨑 誠