犯行時少年であった被告人の報道に関する会長談話

裁判員制度が始まり、多くの裁判報道が行われていることは、国民の司法への関心を高めることに大きく寄与しているものと思われる。


ところで、裁判員裁判の被告人のなかには、犯行時少年であった者も含まれている。また、成人になった後の犯行で被告人となった者のなかに、少年時に別件の罪を犯している者もいる。


少年事件に関しては、少年法61条が「家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。」と規定している。すなわち、公開裁判が行われることになった事件であっても、犯行時少年だった被告人の実名等の推知報道を行うことは、同条に明白に違反する。同条は、少年法の健全育成の理念に則り、未熟な少年期の犯罪については本人を特定できる報道を禁止し、被告人が将来更生して社会復帰する権利を保障するために定められた極めて重要な規定であり、裁判員裁判にも当然適用される。この規定の趣旨・目的については、マスコミ各社の理解が進んでいると、当連合会は評価している。


ところが、近時、少年期に犯した罪で成人後に起訴された裁判員裁判対象事件において、一部のマスコミが被告人の実名を報道する事例が散見された。これは、極めて遺憾である。


報道機関におかれては、少年法61条を遵守しつつ、国民の正当な関心に応える報道をされるよう、改めて強く要請する。


2009年(平成21年)9月10日


日本弁護士連合会
会長 宮﨑 誠