最低賃金の引上げに関する会長声明

  1. 昨年7月に施行された改正最低賃金法は、最低賃金を定めるにあたっては労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護水準との整合性を求めている(第9条3項)。この法改正を受けて、昨年においては、最低賃金は全国平均で時給703円となり一昨年より16円と、従来と比較し大幅な引上げが行われることとなった。
  2. それでもなお、全国平均の時間給703円では、1日8時間、月22日間働いたとしても、月額給与は12万3、728円、年収148万4、736円にしかならない。先進諸外国と比較してもわが国の最低賃金は最も低い水準に位置している。働いても働いても人間らしい生活ができない「ワーキングプア」が社会問題となっている今日、最低賃金の引上げは依然として緊急の課題である。
  3. とりわけ、現在の最低賃金水準は、厚生労働省の調査によれば、少なくとも12都道府県において生活保護水準を下回っている。例えば、神奈川県や東京都においては、生活保護水準との乖離を解消するためには時間給60円以上の引上げが必要な状況にある。
  4. 現在、中央最低賃金審議会において最低賃金改定が論議されており、今後各都道府県において地域別最低賃金が定められることとなっている。昨年来の金融危機、世界的経済不況を理由に、最低賃金の引上げに異を唱える見解もあるが、改正最低賃金法が定めた生活保護水準との整合性の確保は、国民の生存権保障にも直結する緊急の要請であることから、最低賃金の引上げにより、少なくとも生活保護水準との「逆転」現象を解消すべきである。

2009年(平成21年)7月16日


日本弁護士連合会
会長 宮﨑 誠