足利事件再審開始決定に関する会長声明

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  1. 東京高等裁判所第1刑事部は、本日、菅家利和氏に対する再審を開始する決定を下した。
    当連合会は、17年半もの間、不当にも身体を拘束され、心身共に重大な苦痛の中で無実を訴え続けて闘って来た菅家氏のご苦労に対し深く思いを致すとともに、司法の一翼を担うものとしてその責任の一端を痛感する。
  2. ところで、本日の決定の内容は、弁護側推薦、検察側推薦の両鑑定人の鑑定に基づいてはいるものの、菅家氏が逮捕され有罪判決の根拠となった警察庁科学警察研究所が行ったDNA型鑑定が誤っていたと明確に指摘するものではないことは、極めて遺憾である。
  3. 当連合会は、宇都宮地方裁判所が、これから行われる再審公判において、菅家氏に虚偽の自白を強いた取調べの経緯や科学警察研究所担当官による誤ったDNA鑑定の経過などについて審理を尽くして、本件の誤判原因を究明するとともに、再鑑定申請を採用しないなど誤った判断を4回も繰り返した裁判所を含む司法関係者の責任を明らかにした上で、速やかに再審無罪判決を下すよう求める。
  4. 裁判員裁判の公判が開始されようとしている今、裁判官をはじめ司法にかかわるすべての者は、本件の教訓を強く銘記し、再び誤判が生じることがないように、適正手続を遵守し、「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の原則を一人ひとりが心掛けて裁判に取り組まなければならない。

 

当連合会は、足利事件の誤判の真相解明と菅家氏の再審無罪の獲得のため、今後とも全力で支援していくことを改めて表明する。

 

2009年6月23日
日本弁護士連合会
会長 宮﨑 誠