広島少年院における職員暴行事件に対する会長談話

広島矯正管区は、広島少年院での法務教官による暴行事件について、5月22日に中間報告を公表した。同報告によれば、法務教官4人が中心となって、収容中の少年に対して殴る蹴るなどの身体的暴行を加えたほかトイレに行かせず失禁させるなど、100件におよぶ暴行等が約50人の少年に加えられた事実があったとのことである。


中間報告により明らかにされた事実だけをみても、見過ごすことができない重大な人権問題である。また、本事件は単独の教官による一回限りの行為ではなく、複数の教官が関与して50人を超える少年に対して長期間暴行行為を繰り返していた事件であることから、本少年院には組織的構造的に極めて根深い問題が存在すると言わざるを得ない。


まず、被害少年全員に対しては、早急に心理的ケアを含めた慰謝の措置をとるとともに、事案の充分な真相究明を図るために弁護士等外部の専門家を含めた調査チームによる原因分析を実施すべきである。また、少なくとも本事件の一因が少年院という閉鎖社会にあったことは否定し難いことから、全国の他の少年院においても、同様の事態が生じていないかの早急な調査が求められる。


さらに、今後、職員による暴行等の人権侵害が繰り返されることのないように、少年院においても、刑事施設に設置された刑事施設視察委員会と同様の第三者委員会の設置を進め、施設内における少年の権利保障を図るべきである。


2009年(平成21年)5月28日


日本弁護士連合会
会長 宮﨑 誠