足利事件DNA鑑定書開示に関する会長談話

本年5月8日、東京高等裁判所は、当連合会が支援する足利事件について、弁護側推薦、検察側推薦の鑑定人のいずれも、被害者の半袖下着の精液痕に由来するDNA型と請求人の菅家利和氏のDNA型は一致しないとするDNA再鑑定書を弁護団に交付した。


DNA鑑定で不一致という結果となれば、アリバイの成立と同様、直ちに冤罪が証明される。本件における鑑定人両名の結論は、18年の間に極めて進歩した最新の技術や高い精度を持つDNA鑑定の結果に基づくものであり、菅家氏の冤罪は明白となったというべきである。したがって、当連合会は、裁判所に対し、速やかな再審開始決定を求めると同時に、検察官に対し、DNA再鑑定の結論を受け容れ、速やかに、刑事訴訟法第442条但書に基づき菅家氏の刑の執行を停止し、再審公判へ移行することを求める。


また、本件は、冤罪者であっても自白に至ってしまうという現実を改めて明白にしたものであり、取調べの全面可視化の要請は一層強まったというべきである。当連合会は、今後とも、自白の任意性、信用性の審査が正しく機能するよう、取調べの全面可視化を訴えていく。


今回の再鑑定の結果は、DNA鑑定が犯人の検挙だけではなく、冤罪者を救済する大きな武器になることも示している。当連合会は、2007年12月21日に「警察庁DNAデータベースシステムに関する意見書」を採択し、そこにおいて、冤罪を訴える者がDNAデータベースへアクセスする権利の保障を提言した。今後は、条件が整う限り、冤罪を訴える者のDNA鑑定の実施を保障する法制度の定立が急務であると考え、その実現に努力する。


2009年(平成21年)5月22日


日本弁護士連合会
会長 宮﨑 誠