市民の皆様へ(会長談話)~裁判員制度の実施にあたって~
裁判員制度が本日5月21日からいよいよ実施されます。
裁判員裁判は、市民の皆様に参加していただき、無罪推定など刑事裁判の原則に忠実な、「よりよい刑事裁判」を実現するために実施されるものです。世界のほとんどの民主主義の国で行われている市民の司法参加が、いよいよ実現します。
6人の市民が、捜査官がつくった捜査書類を裁判官が読みこむのではなく、法廷での生きたやりとりをもとに判断する裁判が始まることの意義は、刑事手続改革の面からも、極めて大きいと考えます。
また、市民の皆様が刑罰のあり方や、被告人の更生に向き合うことによって、司法制度や社会全般への関心と理解が深まり、よりよい司法制度を作ることの契機となればと願っています。一方、市民の皆様にはこれまでにない負担をお願いすることになります。裁判員は簡単に済むとか、負担は軽いなどとは決して言いません。
しかしながら、透明で健全な刑事裁判や捜査を実現することは、市民の皆様にとっても重要なことだと思います。従来の専門家だけの不透明な制度を変えるためには、皆様の参加が不可欠です。
我々は、市民の皆様が不安や戸惑いをお感じになっていることを、真剣に受けとめています。しかし、検察審査会での永年の経験や、戦前の陪審裁判における経験からすれば、我が国でも市民の皆様が参加する刑事裁判が定着すると確信しています。
我々は、引き続き、弁護の技術を高め、分かりやすい裁判にむけて努力するとともに、裁判員が参加しやすい制度の実現、透明な捜査と裁判手続、そして、裁判員の守秘義務の軽減等の課題に取り組むとともに、取調べの可視化(全過程の録画)など、被疑者・被告人の権利が十分保障された刑事手続の実現に向けて力を尽くします。
裁判員制度のスタートの日に、我々のお願いと裁判員裁判の定着に向けた決意を改めて申し上げ、市民の皆様のご協力をお願いする次第です。
2009年(平成21年)5月21日
日本弁護士連合会
会長 宮﨑 誠