外国人の在留管理を強化する入管法等の「改正」法案に対する会長声明

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外国人の在留管理を国に一元化して強化する、出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)などの改正法案の審議が国会で開始された。

 

当連合会は、外国人の在留管理の強化に対しては、外国人の人権保障と多民族多文化共生社会の構築の観点から意見を述べてきたところであり、今回の改正法案についても、以下のとおりの大きな問題点がある。

 

第1に、今回の改正法案によって、外国人登録証明書が廃止され、国は、中長期在留者の外国人には在留カードを、特別永住者には特別永住者証明書を交付し、その常時携帯を罰則(中長期在留外国人については特に刑罰を科す。)をもって義務づけることとなる。しかし、戦前から日本で生活する旧植民地出身者やその子孫である特別永住者、一般の永住者まで含む全ての中長期の在留者に対して常時携帯を義務づけることは、外国人に過度の負担を課すと同時に、外国人全てを監視の対象とすることにより差別や偏見を助長するものとなりかねないことから、常時携帯義務を課すべきではない。

 

第2に、在留カード、特別永住者証明書については、カードに組み込んだICチップ及び券面の双方に各カードの番号を記録するとしているが、カード番号の閲覧・利用に制限がないため、カード番号をマスターキーとして、すべての個人情報が名寄せされ、利用される危険がある。少なくとも、住民基本台帳法における住民票コードを含む本人確認情報保護の対策等と同様の個人情報保護のための特別な規定が整備されるべきである。

 

第3に、外国人が所属する学校などの機関が、所属する外国人に関して、受入れの開始及び終了に加えて「その他受入れの状況」に関する事項の届出を国に行うよう義務づけられることとなるが、このように、広範な情報を国に報告させることも可能となるような制度は、学問の自由や外国人のプライバシー権を侵害するものとなりかねない。

 

第4に、日本人の配偶者がその「身分を有する者としての活動を継続して3月以上行わない」ときなども、在留資格取消制度の新たな対象とするとしているが、相手方の不貞行為やDVの被害が原因で別居を余儀なくされている者まで取消の対象となりかねず、外国人配偶者の立場を著しく弱めるものとなる。

 

第5に、今回の改正では、外国人住民も新たに住民基本台帳に記載し、外国人住民の利便の増進などを図るとしている。当連合会もこの方針を評価するものであるが、中長期在留者、特別永住者、一時庇護許可者又は仮滞在許可者などに記載の対象を限定せず、少なくとも仮放免許可者を加えるなどするべきである。

 

当連合会は、少なくともこれらの問題点の修正なくして、今回の改正法案を成立させることには反対であり、抜本的な修正に向けて慎重な審議を行うことを求めるものである。

 

2009年4月24日
日本弁護士連合会
会長 宮﨑 誠