太陽光発電についての買取制度導入に関する日弁連コメント

2009年(平成21年)3月6日
日本弁護士連合会


経済産業省は2009年2月24日、家庭などでの太陽光発電による余剰電力を、一定価格で電力会社が買い取ることを義務づける「日本型買取制度」を導入し、来年からの実施を目指すと発表した。これまでは電力会社が自主的に、通常の電気料金と同じ1キロワット時24円程度で太陽光発電による余剰電力を買い取っていたが、今般、これを約2倍の価格で10年程度買い取ることを義務づけるというものである。開会中の第171回通常国会に提出予定である「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律案」において、経済産業大臣による事業者の判断の基準となるべき事項を作成し告示するとの措置が予定されている。


固定枠制(RPS)に固執し、固定価格買取制度に消極的であった政府が、部分的にではあるが、この制度を導入する方針に転換したことは評価したい。


しかし、「日本型買取制度」とされる本制度は、以下に述べるとおり、再生可能エネルギーの飛躍的な拡大を通して地球温暖化を防止し、経済の再生を図る制度としては不十分であるといわざるを得ない。


  1. 対象が太陽光エネルギーだけに限定されており、風力やバイオマスなど他の再生可能エネルギーに適用されない。この制度のパイオニアとされるドイツでも最も効果を上げたのは風力発電の急速な導入であった。適用対象を再生可能エネルギー全体に拡大するべきである。


  2. 買取の対象がこれまでと同様に自家消費分を除いた余剰電力分に限定されており、買取期間も10年間に限定されている。しかも、将来設置分については買取価格をさらに低減させる予定としている。このような買取制度が再生可能エネルギーを大幅に普及させる政策となりうるか疑問である。ドイツにおいて再生可能エネルギーが飛躍的に拡大した最大の要因は、20年にわたる買取を保証し投資の回収を確実にしたことにあった。より高い水準の価額による買取を20年間は保証すべきである。


  3. 買取の義務付けと消費者への負担の転嫁は、国民の権利義務にかかわる事柄であり、その対象再生可能エネルギー発電電力の種類、買取価格、買取期間などを、経済産業大臣が判断基準として告示する等の方式に委ねることは不適切である。再生可能エネルギーの買取制度については、国民から広く意見を募ったうえで真に再生可能エネルギーの飛躍的拡大につながる制度を設計し、法律において買取制度の具体的な内容を明確に定めるべきである。