自衛隊のソマリア沖への派遣に反対する会長声明
政府は、本年1月28日、ソマリア沖海賊対策のために自衛隊法82条に基づく海上警備行動として、海上自衛隊をソマリア沖に派遣する方針を決定した。これを受けて、同日、浜田防衛大臣は派遣準備指示を出し、派遣に向けた準備が行われている。
しかし、自衛隊の活動は、憲法9条の趣旨に沿って「自衛のため」の範囲内に止められるべきことが大原則である。しかるに、今回の海上警備行動は、領海の公共秩序を維持する目的の範囲(自衛隊法3条1項、同法82条)、すなわち「自衛のため」の範囲を遙かに超えてソマリア沖まで海上自衛隊を派遣するものであり、その点において憲法9条に抵触するおそれがある。
また、海賊行為等は、本来警察権により対処されるべきものであり、自衛隊による対処にはそもそも疑問がある上、海賊対策に協力する国家に武力行使を含む「必要なあらゆる措置を講じること」(国連安全保障理事会1851号決議)が認められる海域に自衛隊が派遣されれば、自衛隊が武力による威嚇、さらには武力行使に至る危険性があり、この点においても武力行使を禁止した憲法9条に反することとなるおそれがある。
ソマリア沖の海賊行為等は、深刻な国際問題であり、国連安保理決議がなされているなど、問題解決のために、国際協力が重要であることは明らかである。しかし、わが国が今、国際社会の中でソマリア沖海賊対策としてなすべきことは、日本国憲法が宣言する恒久平和主義の精神にのっとり、問題の根源的な解決に寄与すべく、関係国のニーズに配慮しながら人道・経済支援や沿岸諸国の警備力向上のための援助などの非軍事アプローチを行うことである。
よって、当連合会は、ソマリア沖に自衛隊を派遣する海上警備行動の発令に反対する。
2009年(平成21年)3月4日
日本弁護士連合会
会長 宮﨑 誠