死刑執行に関する会長声明
本日、東京拘置所において1名、名古屋拘置所において2名及び福岡拘置所において1名、計4名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
これは、森英介法務大臣が就任してから2度目、昨年10月28日の執行からわずか3か月という短期間での死刑執行である。
我が国の死刑制度は、国際社会においてかつてないほどの注目を集めている。世界では、死刑制度の廃止が潮流となっており、我が国をはじめとする死刑存置国に対し、死刑の執行を停止し、あるいは死刑適用の制限を求める動きがますます強まっている。昨年12月18日には、国連総会本会議において、死刑執行の停止を求める決議が、一昨年を上回る圧倒的多数の賛成で採択されたことは、こうした国際情勢を端的に示すものである。
我が国では近年、死刑判決数及び死刑執行数がともに顕著な増加を見せている。こうした状況に対しては、我が国が批准する人権条約の実施機関のみならず、国連人権理事会による普遍的定期的審査においても深刻な懸念が示され、死刑に直面する者に対する権利保障を整備するとともに、死刑廃止を視野に入れ、死刑の執行を停止することが勧告されてきた。
特に、昨年10月には、国際人権(自由権)規約委員会により、世論を理由に避けるのではなく死刑廃止を前向きに検討すること、精神障がいが疑われる者等への死刑執行に対して人道的なアプローチをとり、執行日時を事前に告知すること、必要的上訴制度を導入し、再審請求等による執行停止効を確実にすること等、我が国の死刑制度を抜本的に見直すことを求める多くの勧告がなされた。
ところが、今回執行された4名のうち2名は自ら控訴を取り下げ、かつ、うち1名については公判段階から一貫して精神障がいの存在が争われており、上記勧告との関係でも極めて重大な疑義が生じる。
国連機関による度重なる勧告はいずれも、死刑が最も基本的な人権である生命に対する権利を否定する究極の刑罰であり、死刑制度は人権にかかわる重大な問題であるという認識のもとになされている。人権問題は、世論や多数決により決せられるべきものではなく、まして、世論に依拠して死刑適用の拡大や死刑執行の促進に走ることは許されない。裁判員制度の実施を控え、死刑制度とその運用に対する社会の関心が高まっている今こそ、死刑制度が抱える問題点を広く社会が共有し、改革の方向性を探るべき機会である。
当連合会は、改めて政府に対し、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、重ねて強く要請するものである。
2009年1月29日
日本弁護士連合会
会長 宮﨑 誠