情報公開訴訟におけるインカメラ審理の法制化を求める会長声明

最高裁判所は、2009年1月15日、沖縄の米軍ヘリ墜落事故にかかる国を被告とする情報公開訴訟に関し、福岡高等裁判所が不開示情報について実質的なインカメラ審理(裁判所だけが文書等を直接見分する方法により行われる非公開の審理)を行うことを認めた検証物提示命令を破棄し、改めてこれを却下する旨の決定(以下「本決定」という。)を下した。


本決定は、その理由として、現行法に明文の規定がない以上、文書の所持者にインカメラ審理を受忍すべき義務はない、とした。しかし、他方で、本決定は、明文の規定を置くことでインカメラ審理を採用できることは認め、しかも、泉裁判官は、インカメラ審理を「国民の知る権利の具体化として認められた行政文書開示請求権の司法上の保護を強化し、裁判の信頼性を高め、憲法32条の裁判を受ける権利をより充実させるもの」と評価し、また、宮川裁判官は、「インカメラ審理の導入について情報公開制度を実効的に機能させるために検討されることが望まれる」と述べており、5人の裁判官のうち、2名がインカメラ制度導入に積極的な姿勢を示していることは注目に値する。


当連合会は、これまで、情報公開訴訟におけるインカメラ審理について様々な観点から検討を加えた上で、ヴォーン・インデックス(不開示とした情報の項目と不開示とした理由について、文書で説明すること)を行った上でなお不開示事由の相当性についての判断ができないときは、インカメラ審理を行う旨、情報公開法を改正すべきであるとの提言をしてきた。


本決定により、立法により情報公開訴訟にインカメラ審理手続を導入する正当性及び必要性はさらに明確になったといえる。法制化に向けての関係各位の取り組みを求めると共に、当連合会としても、一層、取り組みを強化する決意を表明するものである。


2009年1月23日


日本弁護士連合会
会長 宮﨑 誠