死刑執行に関する会長声明

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本日、仙台拘置支所及び福岡拘置所において1名ずつ、計2名の死刑確定者に対して死刑が執行された。

 

これは、本年に入ってから5回目の死刑執行であり、執行された死刑確定者の数は、本年だけで15名にのぼる。これは、過去30年間で最多の数である。


今、我が国の死刑制度は、国連をはじめとする国際社会から、大きく注目されている。国際社会においては、死刑廃止が潮流となっており、死刑制度を存置する国においても、死刑の執行を停止し、あるいは死刑の適用を制限する動きが相次いでいる。2007年12月に、国連総会本会議において、死刑執行の停止を求める決議が圧倒的多数で採択されたことは、こうした流れを端的に示すものである。


これに対して、我が国では、死刑判決数及び死刑執行数がともに、近年顕著な増加を見せており、こうした我が国の状況に対しては、国連拷問禁止委員会(2007年5月)、さらに国連人権理事会(2008年6月)から深刻な懸念が示され、死刑に直面する者に対する権利保障を整備するとともに、死刑の執行を停止することが勧告されてきた。


そして本年10月15日、16日の両日には、国際人権(自由権)規約委員会により、我が国の人権状況に関する第5回の審査が行われた。審査では、特に、死刑判決に対する上訴が義務的とされていない現状に対する深刻な懸念が示された。本日死刑を執行された2名のうちの1名も、控訴審において第一審の無期懲役を破棄して死刑が宣告され、その後上告の取り下げにより死刑が確定している。また、死刑制度とその運用について、日本政府が国内世論の支持を理由として挙げたことに対して、委員からは、死刑制度は人権問題であり、世論で決定すべき事柄ではないとの批判が相次いだ。


国際人権(自由権)規約委員会の最終所見が、まさに本日中にも採択されようとしている。ところが、政府は、敢えて本日の死刑執行に踏み切ったものである。これは、政府が、国際社会からの要請には一切耳を傾けず、我が国が加入した人権条約を尊重する意思がないことを、国際社会に対して宣明する行為に等しい。最終所見において、今まで以上に厳しい勧告がなされることは避けられない状況であり、我が国の死刑制度に対する国際社会からの批判は、今後ますます高まるであろう。そればかりか、このような状況では、国際社会から人権国家としての評価を失うことになりかねず、強い危機感を覚えざるを得ない。


当連合会は、改めて政府に対し、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、重ねて強く要請するものである。


2008年10月28日


日本弁護士連合会
会長  宮﨑  誠