「布川事件」検察官の特別抗告に対する会長声明

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昨日、いわゆる「布川事件」の再審開始決定を維持し検察官による即時抗告を棄却した東京高等裁判所第4刑事部の決定に対して、検察官が特別抗告の申立てをしたことは、まことに遺憾である。

 

本件決定は、数々の新証拠について、検察官の意見も十分に聴いた上で、慎重な審理を遂げた結果、これら新証拠が「確定審における審理中に提出されていたならば、請求人らを有罪と認定するには、合理的な疑いが生じていたものというべき」であるとしたものである。

 

本件においては、明白性有りとされた新証拠の多くが、弁護人の求めに応じて再審段階で新たに開示された検察官の手持ち証拠であった。これらの証拠が早期に開示されていれば、そもそも請求人らは有罪判決を受けなかった可能性が高い。

 

検察官に望まれるのは、公益の代表者として、この決定を謙虚に受けとめ、再審開始後の審理において公正な裁判を実現することである。審理の開始自体に異をとなえる特別抗告は、いたずらに審理を長引かせ、また国民世論にも背くものであり、却って検察の威信を損うものと言わざるを得ない。

 

日本弁護士連合会は、検察官が国民世論に謙虚に耳を傾け、特別抗告を一日も早く撤回して、真実の発見と審理の促進に協力されるよう強く要望するものである。

 

2008年(平成20年)7月23日
日本弁護士連合会
会長 宮﨑 誠