死刑執行に関する会長声明

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本日、東京拘置所において2名及び大阪拘置所において1名、計3名の死刑確定者に対して死刑が執行された。


当連合会は、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、これまで再三にわたって法務省に対し要請してきた。しかるに、2007年12月以降の半年余りという極めて短い期間で、合計13名もの大量の死刑執行が行われたものであり、かような事態に対し、深い憂慮の念を示すとともに、強く抗議する。

 

国際社会においては、死刑廃止が潮流となっていることが明らかである。
1989年の国連総会で死刑廃止条約が採択され(1991年発効)、1997年4月以降毎年、国連人権委員会(2006年国連人権理事会に改組)は「死刑廃止に関する決議」を行っている。さらに、2007年12月には、国連総会本会議において、死刑執行の停止を求める決議が圧倒的多数で採択された。

 

また、我が国は1999年に拷問等禁止条約に加入しているところ、これに基づいて2007年5月に行われた拷問禁止委員会による日本政府報告書に対する最終見解・勧告においても、さらに、本年5月の国連人権理事会第2回普遍的定期的審査においても、我が国における死刑の執行の継続に対する懸念が多数の国から表明され、政府に対し死刑執行の停止が勧告された。

 

これは、国際社会の共通の意思の表明に他ならず、今、我が国に求められているのは、上記勧告や決議案にどう応えるかも含めて、開かれた議論を行うことであり、死刑の執行を急ぐことではない。今回の死刑執行は、我が国が加入した条約を尊重せず、国際社会の要請には一切耳を傾けないことを改めて宣言する行為に等しく、誠に遺憾である。

 

また、我が国の死刑確定者は、国際人権(自由権)規約、国連決議に違反した状態に置かれ、その権利行使が十全に保障されてきたとは言いがたい。このような状況で直ちに死刑が執行されることにも重大な問題がある。

 

当連合会は、改めて政府に対し、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、重ねて強く要請するものである。

 

2008年(平成20年)6月17日
日本弁護士連合会
会長 宮﨑 誠