少年法「改正」法案成立に関する会長声明

本日、参議院において、政府提出にかかる少年法一部「改正」法案が、民主、自民、公明三党により修正されたうえで可決成立した。


当連合会は、被害者に対する早期の経済的、精神的支援等の拡充の必要性を主張する一方で、今回の「改正」の柱とされた少年審判の被害者傍聴制度の導入については、少年司法の理念・目的に重大な変質をもたらすおそれがあると指摘し、法案には反対である旨表明してきた。すなわち、被害者の審判傍聴を意識することにより、少年が萎縮して事実を説明したり心情を語ったりすることが困難になり、また、裁判官も傍聴被害者に配慮することにより審判の教育的、福祉的機能が損なわれてしまうおそれが大きい。さらに、適切な処遇選択に不可欠な少年の特性や生い立ち、家族関係等、プライバシーに深く関わる事項を取り上げることが困難になるうえ、内省が深まっていない少年の発言や態度によって被害者がさらに傷ついたり、審判廷内でトラブルが生ずることも否定できないのである。


当連合会は、今回の法「改正」の重大性に鑑み、短期間の国会審議で被害者傍聴制度が導入されたことは遺憾といわざるをえない。


国会の審議においては、被害者傍聴の要件として、「少年の健全育成を妨げるおそれがない」ことを明記し、被害者による審判傍聴を許すには、予め弁護士付添人の意見を聴かなければならず、少年に弁護士付添人がないときは、家庭裁判所が弁護士付添人を付さなければならないとし、さらに、12歳未満の少年の事件は傍聴対象事件から除外したうえで、12歳、13歳の少年の事件への被害者傍聴については、少年が精神的に特に未成熟であることを十分考慮しなければならないとする修正がなされた。これは、少年法の理念と目的の重要性が再認識され、制度導入による弊害を抑えるためのものとして、その意義は大きい。しかし、修正された「改正」法についても、根本的な問題点が払拭されたといえず、被害者傍聴を認める際に弁護士付添人を付することを要しない場合を設けたこと、また、新たに家庭裁判所の説明義務を付加したことは、その具体的運用によっては少年審判にもたらす影響を軽視しえないといわざるをえない。


当連合会は、今後、家庭裁判所の人的態勢と物的設備の拡充を求めるとともに、各地の弁護士会と司法支援センターにおける弁護士付添人選任の態勢を拡充する取り組みを進め、新たに導入された制度の運用を注視しつつ、少年の権利擁護と成長支援及び被害者支援に向けた具体的活動を充実・強化する決意である。


2008年(平成20年)6月11日


日本弁護士連合会
会長 宮﨑 誠